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Botanist / VI: Flora (2014)

USはサンフランシスコの一人エクスペリメンタル/ポストブラックメタルプロジェクトによる、4thフルレングスアルバム。
Flenser Recordsよりリリースされた。

海外ではプラントメタルなどと言われており、新しい音楽性としての確かなフィールドを築きつつあるこのプロジェクト。
ポストブラックメタルの系譜に準えた音楽で在るように思うが、それと同時にGreen Trees等のKyte経脈的なポストロックの素養も香っており、所感では、日光浴の様な仄温かいバッキングの中で、蝦蟇蛙が濁声で控えめに歌っていると言うような情景が心象に残る。

ダルシマーを用いたこの音像は、そのツィター属打弦楽器によって奏でられるピアノにも似た、じゅんさいの周りやアロエの果肉の様な綺麗で澄んだ音色が特徴となっており、それは甘美な旋律に半ばエスニックな趣きを交え、ポストロック準拠でブラックメタル然としたポストブラックのアンサンブルとも融合することによって、温かみに満ち満ちていながらも不協和的な歪や植物の脆弱性を醸し出してゆく。そういった概念は、この植物偏愛的サウンドスケープに対し知的でアーティスティックな感性の萌芽を感じさせる要因と成り、サンフランシスコの前衛的なブラックメタルバンド群にも引きを取らないクオリティを見せつける要因とも成り代わり、結果的には所謂新しい音楽が大好きな音楽評論家様方に賞賛される主因と成ってくるのだろう。

また、アンビエント的な難解な素養を多く持ち合わせるサンフランシスコのブラックメタラー達だが、彼に関して言えば割とストレートな音像を展開しており、半分は最早形式化されたポストロックだと言う真っ直ぐな説得力と祝福的な趣きに満ちている。

植物になぞらえて言えば、スイカの持つ野菜コンプレックスが、メロンの果実性を疎ましく思い、スイカが遺伝的変異乃至はメタモルフォーゼを行い果実となった、つまりは、ブラックメタルはださいと言う感性のコンプレックスが根を生やし、ポストロックに巻き付いて離れなくなったといえるサウンドであり、そんな夏の食文化あるある的風物詩的な爽やかさが、何処ぞの縁側に射し込む日の光に照らされることによって、ぼくの夏休み的な、朗らかながらもしんみりと心に残る郷愁の念を内包した独自のポストミュージックとなる訳であるのだ。

意外にもダルシマーによる似たような音の連続ながらに曲構成は確りとしており、
速いパート、スローな展開、小気味の良い変拍子のドラミング、不協和音やマイナーコードからちゃんとメジャーコードに帰るという御悧巧な音楽理論、音を重ね音量を操るプログレッシブ要素、ダルシマーでしっとりとオトす部分など、
そこかしこにちゃんとした聴き所や構築美があるのは、一応書き添えておきたい。

総じてブラックメタルみたいなKyte経脈のポストロックと言う観は拭えないものの、一見控えめに聴こえるが確実に心に広がっていく植物の如き強さを持つ音像が日光に照らされ生え広がるが故に、アートワークから音像から何から何までにわたり徹底してネイチャー要素をぶっ込んだ全体の作風が発芽したと言える、その脱帽級のアートセンスは、プラントメタルと言う新たなジャンルとしてメタル界に根を張り、聴く者の心に新たな実を落とし苗床にして、今後もじわじわと種を蒔き枝葉を広げていくのだろう。

曲目は、

1. Stargazer  03:30  
2. Callistemon  04:16  
3. Cinnamomum Parthenoxylon  02:38  
4. Gleditsia  02:07
5. Rhizophora  03:47 
6. Dianthus  03:17
7. Leucadendron Argenteum  06:09  
8. Pteridophyte  03:40  
9. Wisteria  04:50  
10. Erythronium  02:39 
11. ...Gazing...  00:54 

Total 37:53