8convulsionscover
Crisis / 8 Convulsions (1994)

Too Damn Hype Recordsよりリリースされた、
NY産ドゥーム/スラッジコア/ハードコアのCrisisによるデビュー作。

Crisisは、ex-Crisis、ex-Ephel Duathで現Gospel of the WitchesのKaryn Crisis女史が率いたドゥーム/スラッジコア/ハードコアバンドである。
彼女の歌唱が統率し呼びかけるサウンドは、Black Sabbathの影響化にあるドゥーミーなハードコアを推し進めたと言えるものであり、
技術的な面でのスラッシーな感触も加わって、この1stの時点では、異形のテクニカルドゥームConfessorを想起させるようなドゥームネスを漂わせる。
ジャケットにも奇妙な親和性を覚えるが、実のところはConfessorのように殺伐としている訳でもなく、寧ろフットワークも軽い方で、爽快感もあると言うのは留意したい。

音楽性としては他にも砂埃感が多分に感じられ、当時の主流であったHelmet等の流れも汲まれているように思うが、そういったメジャーな音楽の範疇で語られるのは違う、アンダーグラウンドな香りがじりじりと這い回る。
バッキングは先で触れたConfessorの様な混然サウンドとも、砂埃感の面ではFudge Tunnelの様なスラッジコアとも言えるのだが、何よりも特徴的なのは、持ち前の特異なボーカルスタイルで、それによってこの時点でスラッジコアとそこから派生していく激重方面の幅を広げることに成功し、92年に元祖ゴスパンクバンドDaisy Chainsawの歌姫であり、後にqueenadreenaで歌うことになるKatieJane Garside女史が作り出した不健全な女性ボーカルモノの流れを、94年に自分たちのスラッジコアで受けたとも言える。
兎に角、当時のマニアとハードコア~ドゥームメタルシーンにエクストリームな偏向を見せつけ衝撃を齎したであろうスタイルなのだ。

そしてその特筆すべきKaryn Crisis女史の歌唱は、一見ラフな装いを構えているが、剥き出しのシャウトやデスボイスもあり、ウィスパーボイスも聴かせている。
こういった歌唱法の一つ一つが、バンドに色を添え呼びかける様には、後に出てくるMade Out of BabiesのJulie Christmas女史や、ブラッケンドオルタナティブメタルで知られるDjervのAgnete Kjolsrud女史を彷彿とさせるものだが、それよりも些かラフでピュアに聴こえるのは、NYの土地柄と嗜好するハードコアのバックグラウンドに依るものだろう。
このピュアな感覚は、嗜好性に満ちた煙と本能的な可憐さ振り撒き、聴き手の中毒性を煽る。

また、単純に本作の良さを述べ続けることが許されるのなら、Karyn Crisis女史の歌唱は勿論の事、曲順と曲自体の緩急についても、そしてバンドの持つ引き出しの多さにも良さを感じる。
スラッシュとドゥームとハードコアの良いとこ取りのキメラティックサウンドは、グルーブで乗らせドゥーミーに沈みダレそうになったら間髪入れずスラッシーに刻むのである。
曲を追えば、正にCrisis到来の♯1♯2では微妙な変拍子を交えてドゥーミーに詰め寄り、♯3にて夜明けと悠久の時を思わせるスラッジコアで全体に陰陽の深みを落とし込む、♯4でスラップベースのメインリフが印象的なグルーヴナンバーで乗らせ、
♯5からはスラッシーな刻みが増えながらもグルーヴの意識を怠らない実に絶妙な構築力を披露、♯6はスラッシュリフによるミニマムな展開の中でボーカルが最も発狂しており、この辺がアグレッションの最高潮と言える。
♯7ではドゥームに戻り、ノリの良いスラッジリフを鳴らしているが、これは稚拙さの微笑ましいデスメタリックな歌唱とも相まって本作中で最も重いナンバーと成っており、続くラスト♯8のイントロに明かりを灯すかのごとく、対比として陰を描いている。
♯8は明かりを灯されたイントロから後半にかけてスラッシュ色を強め、アルバムは終わる。

この一連の流れに先で述べたKaryn Crisis女史の歌唱が加わり、そして時代の交錯した多くの引き出しによる特異性が相まうことで、楽曲それぞれの独自性が浮かび上がり、アルバム全体に於いては非常にユニークな形を成し示す訳だ。
それはカオティックと言ってもいいかもしれないが、冒頭で述べた通り、Confessorよりは殺伐としている訳でもなく、寧ろフットワークも軽い方で爽快感もあると言うことは事実であるので、全体を通してとても聴きやすい上、面白いという奇跡のバランスを誇る。
また、そういった因子を踏まえれば、音楽は精神性と信ずる者に、如何にも難解で聴き難く殺伐としたConfessorを引き合いに出すのは少し可笑しいと思われるかもしれないが、引き合いに出したのは、スラッシュ、ドゥーム、ハードコア、女性的なボーカルワークといった、技術的な面での音楽的素養の共通項が多いからであると解っていただきたい。

兎にも角にも、90年代のヘビィミュージックと言うのは、多かれ少なかれどれも皆90年代の荒廃した歪みの世界で行き場を模索し奮闘した結果としての、実験性や焦燥感が伝わってくるのだが、
このCrisisによるデビュー作も御多分に洩れずで、更にその混沌とした時代の衆の中で、今でも色褪せない輝きを放っているように思う。

また、余談ではあるが、本作で歌っているKaryn Crisis女史は、2006年にCrisisを解散し、その後絵画などの芸術方面に勤しみ、2011年にイタリア産アヴァンギャルドメタルのEphel Duathに加入、Ephel Duathは2014年に解散される訳だが、
そこでのギタリスト兼キーボディストであるDavide Tiso氏と結ばれて、現在は2人でGospel of the Witchesというドゥームメタルバンドをやっている。
本当のことを言えば、今回の更新はそのGospel of the Witchesの1stについて書きたかったのですが、手元にまだ届いておりません。
まだ届いていないのですが滅茶苦茶良いです!!みたいな参考になった数44人中0みたいなのは誰も見たくないでしょう?

曲目は、

1. There Goes My Soul  04:49 
2. Sweething  03:42
3. Gemini  03:11 
4. More Than Down  03:22  
5. Smash to Pieces  03:24 
6. Drilling Me  04:56 
7. Rotten Anyway  03:48 
8. Keep Me From Falling 05:48 

Total  33:00  

♯3♯7♯8はyoutubeにリンクしてあります。

***Karyn Crisis
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