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Tome of the Unreplenished / Innerstanding (2015)

キプロス産一人アトモスフェリックブラックメタルプロジェクトによる、1stフルレングスアルバム。
Mare CognitumやSpectral Lore等の神秘的なブラックメタルバンドを擁するI, Voidhanger Recordsからのリリース。
ジャケットはHorrendousのEcdysisを手掛けたBrian Smith氏であり、昨年のメタル界隈を顧みれば、コマーシャリティが高そうな本作。

音楽性としては、非常に旧式且つシンプルなアトモスフェリックブラックメタルである。
神秘的なシンセサイザーの音色と、幾つものトレモロリフを叙情的にかき鳴らすギターワーク、
自然にフォースの暗黒面を匂わせるボーカルワークや、打ち込みながらタメを効かせるドラミング、それに程よくうねり程好く低音を響かせるベースといった音達の諸々が織り成す、
一人のアンサンブルは、畏怖の念を感じさせる程に、一貫して崇高で神秘的なサウンドスケープを展開している。

インストゥルメンタルに重きを置き疾走するスタイルは、時折アンビエント要素を交えながらも、
メロウなプリミティブブラックの、ミニマムな展開が孕む煽情性と、それに交わる叙情性が、現代版にアップデートされた風であり、
音数が多くフィーリングに欠けると言った苦言も出かねない昨今のブラックメタルシーンとは違った、アカデミックなフィールドに佇んでいると言いたい。

またこのプロジェクトの特徴としては、思想や哲学を情景にして音像に描き出していると言う点が挙げられるだろう、
metal archivesをご覧いただければお判り頂けることだが、
根底の部分でロングブレスダイエット張りに放出し全体へ漂わせているので、此処でも書き記しておきたい。

その思想・哲学とは、ネオプラトニズム、新プラトン主義である。
それを一言で言うのなら、この世に遍く有象無象は一者(ト・ヘンto hen)から漏れ出したと規定する原初的で神秘的な思想である。

その概念を踏まえて本作を介すれば、不思議と大いなるものから漏れ流れていくようなミスティックパワー然とした音の運びと、全体に於いて指し示された情感や流れが感じられてくる。
結果として、その大いなるものから流れ出す情景のみの一貫性故に、金太郎飴的作風故に、作品自体も大味に成ってしまっている感が少し在るものの、作り込まれていないと言う程未熟な作風ではなく、作品全体に於いて徹底された新プラトン主義が、憂いを孕み、眼前まで切迫してくるような叙情性とダイナミズムを兼ね備えたと言える、
その神秘的なアトモスフェリックサウンドは、神秘的で聴きやすいブラックメタル作品が好きな方や、
一貫したアートセンスを内包するコンセプトアルバムが好きな方や、聴きやすい音でのアカデミックな作風故に、単純にこの界隈の音楽に興味のある方にも、是非聞いて知っていただきたく思います。

そして皆でネオプラトニストになって、なんかしましょう。

曲目は、

1. Anima Mundi  02:52   
2. Take Me to the Stars  07:39 
3. Emanation of the Purest Essence  05:33 
4. Transcended Body  05:52 
5. Planetary Transmissions  02:28  
6. A Monument in Time  06:16   
7. The Precessional March  09:16   

Total  39:56  

♯4はyoutubeにリンクしてあります。
因みに♯1と♯5はシンセの音色鳴り響く非常に神秘的なインスト曲で、アルバム全体の纏まりを保った上での中弛みの防止と言った良心的な配慮が施されている。

Innerstanding

新プラトン主義 - Biglobe