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***Karyn Crisis
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Karyn Crisis' Gospel Of The Witches / Salem's Wounds (2015)

US産プログレッシブ/ドゥームメタルバンドによるデビュー作。
Century Media Recordsからのリリース。

前に書いたCrisisの記事でも触れたが、
これは、イタリア産アヴァンギャルドメタルのEphel Duathに於いてマルチプレイヤーであったDavide Tiso氏と、
その奥方である歌姫、Karyn Crisis女史のユニットである。

ライブメンバーとしてImmolationでのギタリストであるBob Vigna氏やベーシストのRoss Dolan氏、
並びにポストメタルのTombsやポストブラックメタルのVauraでドラムを叩くCharlie Schmid氏を迎えてはいるものの、
音楽性としては、近年のEarthにも近しい、ゆったり間を取ってディストーションの可能性を拡張していく、プログレッシブな音だ。
また根城であったEphel Duathの、アヴァンギャルドな趣がじっとりと融解していくような外観には、Giant Squidにも共通した知的な雰囲気が漂う。
総じてボーカルを主とする雰囲気重視なバッキングであり、終盤には物語が収束していくかの如きドラマ性もある。

そこにKaryn Crisis女史のボーカルワークが相対することに成るのだが・・・。
正直Ephel Duathでの彼女のお仕事は、不得意なデス声のみで、お粗末な結果に終わったとしか言いようが無かったものの、今回は最高のパフォーマンスを見せており、
発展途上だったデス声もクラスト~ポストの流れを汲んだような気丈な咆哮に代わっていて、Crisisのキャリアから確かな年輪を刻みながらに、そこで聴けたいとおしいノーマル声も聴ける。

哀切というのが似つかわしいこの歌唱は、女性ボーカル作品の中にはあまり見かけない種のものであるように思う、
例えば、一般的な女性ボーカルものの傾向を挙げて行けば、嫋やかに揺蕩うようなものであったり、退廃的なものであったり、サイケデリックな雰囲気が濃厚なものであったり、艶々と若々しく耳触りの良いものであったり、タフで男勝りにものであったり、殺気溢れるものであったりするわけである、
こう聞けば魅力的ではあるのだが、各々カテゴライズできる程に同じ歌い方で飽和している現状と、聴き手側の倦怠を覚える既視感の上では、何の訴求力も持たないのが実際の所で、
主には所謂フィーメール系、厭な響きの嬢メタル系の話になるのだが「このタイプね」と言う程度で終わっていくような物寂しさがある。
ところが、今回のは失礼だがそういった普遍的なカテゴリーとは違った、言わば既成概念をぶち破るエクストリームな歌唱と言えるのである。

前述でのドゥーム系のバッキングに、女性ボーカルの歌唱が乗った例として、序でにこのユニットのFor Fans ofとして、
先ず、2013年に解散したTee Pee RecordsのBlack Math Horsemanや、Ides of Geminiのボーカルの一人プロジェクトであるBlack Mare。
その他にも、アトモスフェリックドゥームの新鋭な陰性Obscure Sphinx等が挙げられると思う。

彼女の歌唱には、この魔女のゴスペルといったバンド名通りに魔女然とした雰囲気で追えば、Obscure SphinxのWielebna女史が近しいスタイルになるように思うが、あちらは世俗や近親への憎悪やネガティビィティが強い、
それに反してこちらの歌唱はそういったアンチ精神よりかは、憂慮を漂わせながらも、神秘へこころ輝かせる純粋な趣が纏わりついていく。
して♯2The Alchemist(錬金術師)でのウィスパーな入りや、♯5Mother(母)での囁きから入りノーマル声から切り替わっていく思慕や哀感の入り混じった咆哮等、要点について挙げて行けば枚挙に暇がないのだが、
そのどれもが一つ一つ歌心と成って、何かしらの感慨を打ち込んでくる。
全体を通してまるで月夜に吼える野獣の如きサウンドスケープにも関わらず、哀切や、純粋性が彷彿とされるのは、そんなような広い表現力と、
随所にチラつく荒んだ世界に揉まれた上で尚も世界を愛するようないとおしい歌声、また別の側面として、その世界を守護する母の如きがなり声に依るものが大きいのではないだろうか。

結果としてやはり女性ボーカルものらしく彼女の歌唱ありきな作風ではあるのだが、今まで述べてきた哀切というのが似つかわしい歌唱という希少性と、
普遍的なカテゴリーとは無縁という、何か他とは違うのではないかと言った歌姫感、特異性が、神秘や世界を愛する博愛性とナマで踊らう作品な訳であるので、
近年のEarthみたいな神秘性が好きな方や、まんまではないのだがBlack Math Horsemanのトラッドで知的な音像が聴けなくなって悲しい方には是非是非知っていただきたい。
また個人的な話をすれば博愛性故に、人のこころにコマーシャルに受け入れることが出来ると言うこともあり、今のところでは、真面目に今年聴いてきた作品の中でベストなのである。

なお、先に興奮気味で書き記した「既成概念をぶち破るエクストリームな歌唱」の裏付けとして、Karyn Crisis女史はDecibel Magazine のGreatest Extreme Vocalist of All Time成る企画に於いて26位に選出されている。
(GridlinkのJon Chang氏は19位でウッ!のTom Gabriel氏が1位)

曲目は、

1. Omphalos  02:00   
2. The Alchemist  06:28   
3. Ancient Ways  04:33   
4. Aradia  03:42   
5. Mother  06:05   
6. Father  04:54   
7. Goddess of Light  03:59   
8. Howl at the Moon  05:44   
9. Pillars  03:15   
10. The Secret  03:32   
11. Salem's Wounds  04:47   
12. The Sword + The Stone  04:04   
13. The Ascent  08:19   

Total  01:01:22  

♯5はyoutubeにリンクしてあります。
***オフのKaryn Crisis
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