無題
Sannhet / Revisionist (2015)

US産エクスペリメンタル/ポストメタルバンドによる2ndフルレングスアルバム。
実験色の濃いThe Flenserからのリリース。
作中何回かアナウンスがあるものの、基本的にはインストゥルメンタル作品だ。

タイトルのRevisionistを、Google翻訳で窺ってみれば、修正主義者という語句が登場するが、
これは、軟派資本主義へのアンチ精神が横溢する作品ではない様に思われる。
有り体に言えば、インストゥルメンタル作品に、そのようなレトリカルで知能指数の高い命題を付加させると言うのは、些か無理を感じざるを得ない訳で、
ここは、ジャケットが指し示すように、譫妄の世界や、幻視での方向、或は音楽に於いての修正主義を当て嵌めるのが妥当だろう。

音楽に於いての修正主義がなんなのかは良く判らないが、個人的な感慨では、彼らは先人たちが持ってきた数々の音を見直すことによって、
自ずとそれが自らの音に収束されていくような、後続のポストエクスペリメンタルなのではないだろうかと推測できる。
先人とは何かと言えば、それはFlenserに在籍するポストブラックメタルバンドの音楽が、此処にも存在感を発露してくる訳だが、
同時にポストメタル然とした雰囲気も多分に感ぜられる、Bosse-de-NageやThe Botanist、Russian CirclesやTodtgelichter等の音に共振すると信じられる。

スリリングで手数の多いドラミングは、ポストハードコアのそれであり、
半音の上げ下げピッチの高い不協和音等は、正にポスト/エクスペリメンタルブラックのそれであり、
インストゥルメンタルな作風は、Russian Circles等に代表されるシティ派ポストメタルのそれである訳で。
さながら修正主義と言う左翼的語感が指し示す通り、新潮流の世界に於いて真新しさには乏しいのだが、
♯3に於いて顕著なThe Botanistを彷彿とさせる儚いギターワークや、全体でのToundra然とした手数の多いドラミング、またTodtgelichterの先進的なバッキングが気に入っている方には勿論の事
単にシューゲイザー系に見られる無意味に洒落たジャケット目当てで買っても、楽しめる解りやすさが在るので、
その界隈の質実な新人類に聴いて知っていただければと存じます。

ダイナミックな作風と形容するに足りる、曲ごとに沸き起こるユニークなドラマ性、♯3でのドローン然とした終わり方や、
♯7♯8での音の広がりに重きを置いたソングライティング等は、決して重くも遅くもないのだけれど、昨今のドゥームメタルファンにも訴求するような馴染み深さがある。

曲目は、

1. Revisionist  04:02   instrumental 
2. Lost Crown  02:57   instrumental
3. Enemy Victorian  06:17   instrumental
4. You Thy __  03:50   instrumental
5. Sinking Forward  03:43   instrumental
6. Atrium  03:39   instrumental 
7. Empty Harbor 04:30   instrumental
8. Mint Divine  03:12   instrumental
9. False Pass  05:02   instrumental

Toyal  37:12 


♯7は♯3と繋ぎのライブ映像でyoutubeにリンクしてあります。

Revisionist