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Foscor / Those Horrors Wither (2014)

スペイン産ブラックメタルバンドの4thフルアルバム。
スペインのメタルレーベルAlone Recordsからリリースされた。
アートワークはDeathspell Omega/Droughtで知られるManuel Tinnemans氏が手掛けている。

本作はカタルーニャ語と言う、スペインはカタルーニャ地方の公用語での歌唱が特徴的なブラックメタル作品である。
形式としては、クリーンとグロウルの使い分けがSolefaldに近しいアプローチを魅せる歌唱が先ずあって、
それがEnslavedの端麗な知的さを下地にしてDeathspell Omegaの不協和音を振り撒いたバッキングと共に、
微量の月明かりに照らされた仄暗い海を漂流して行くような暗黒譚であり、
この知的なブラックメタルと言える概観の裡では、お国柄であるかは謎だが透明感や東洋的な響きも効いている。

そもそもManuel Tinnemans氏がアートワークを手掛けている時点で、
Deathspell Omega以後のと思わせるものだが、
そこまでの混沌としたアトモスフィアは無く、エピックな曲展開中での黄昏のメロディーには、
Novembers DoomやGhost Brigade等と言った所謂Katatonia以後のペーソスも感ぜられ、
これは、決して何かのパラフレーズではない独自的な音像であることが窺える。

時折スペイン映画を見ると、セピア色の画面の中で物悲しくもリアリスティックなストーリーが映し出されていて、
その時分の心境としては、新鮮ながら何処か他所の国のやつで見たような馴染みのある既視感に陥るものなのだが、
本作も概ねそういった性質の芸術であり、Deathspell Omega以後の不協和とKtatonia以後の哀感が、
下地となるEnslaved的叙情詩の上で、至って新しい音のように知的に構築される本作は、
様々な暗鬱が風光明媚を頂くかのよう、微細に移ろい行く情景が00年代以降の暗がりの様式美を伴っていて、
やはり上記バンド同様、いと細やかに作りこまれているのである。

とりわけ先進的な音を好む方は、気に入るだろうと思う。私もその一人だ。
稀に挿入されるSEが妙に生臭いのがスペインらしく良い。
因みに#4は同郷のプログレッシブメタルバンドObsidian Kingdomとのコラボレーション曲。


曲目は、

1. Whirl of Dread  06:27
2. Addiction  06:04
3. Senescència  04:33
4. L.amor.t  06:58
5. Those Horrors Wither  05:50
6. Graceful Pandora 03:52 
7. To Strangle a Ghost  06:34 
8. Shysteroos  08:19   

Total  48:37  

#6はyoutubeにリンクしてあります。