Ritual Chamber / Obscurations (To Feast on the Seraphim) (2016)
USはサンフランシスコの一人デスメタルプロジェクトによる1stフルアルバム。
Profound Lore Recordsからリリースされた。
ゴシックメタル開陳後のUSデスメタルシーンにて陰惨なデスメタルをいち早く体現していたバンドにして、
昨今のブルータルデスメタルの礎を築いた、IncantationやImprecationと並ぶ時代の衆の一つであるInfesterでドラムを叩き、
過去のEvokenでキーボードを鳴らしていたNuminas氏のプロジェクトが、Ritual Chamberである。
プロジェクト名を直訳すると儀式の商工会議所となるのだが、
Chamberの解釈は、チェンバーロックのチェンバーと同様に室内楽への連想性を意識したワードであるように思う。
彼は今まで様々なデス/フューネラルドゥーム/ブラックメタルバンドを首謀し、時に渡り歩いていた人物なのだが、
つきまして主題となる本作、Obscurations (To Feast on the Seraphim)では、今までの彼のキャリアを総括する内容となっている。
例えば、黒装束の司祭が興す儀式が、Incantation傘下のPortalやImpetuous Ritualのモゴモゴとしたリフレインを主体にして、
Evokenの神秘的終末主義的なキーボードの音色や、呪術的なブラッケンドデスのスケールが登場するものであるのなら、
その歪が導き出すのは、純然たる神話の中で忽然と蠢き出す茫漠たる暗黒ではないだろうか、
尚且つその場にはInfesterの残滓を瞥見させるような、惨憺にして陰鬱なデスメタルの様式美が成り立っているのであれば、
すなわち本作の概観というのは、彼の一貫したアンダーグラウンドデスメタルへの愛情の結実ではないだろうか。
形而上学的見地から見やれば、その儀式的なサウンドスケープに対する盲目的な帰依が遍く音楽への卑俗性を消磨していくのは、
独断的で恐縮だが、GorgutsやGigan、少し時代を遡ればGorementやDark Millennium等とも同様と言うべき、
人の目からこぼれ落ち時代に取り残されゆく様を物語っているようにも感ぜられるものだが、
このRitual Chamberの過去数十年分のネガティブと暴虐性の幻影に関しては、
既存の陰性の音楽形式をどこまで突き詰められるかという点において、比類なき輝きを放っているようだ。
なので決して革新的な作品ではないのだけれども、
確かに暗黒の世界で先鋭的な要素が繋ぎ合わされている本作は、
Profound Lore好みの先進的なデスメタルの領域で度肝を抜かれるほど完成度の高い作品に仕上がっている。すごいぞ。
真面目な話、単純にこれはEvokenやIncantationのニュータイトルと同程度の反応があってもいいくらいの、
もの凄いプロジェクトなんですが、今ひとつ地味ですなあ。
曲目は、
1. Into the Collective Coffin 06:31
2. The Eternal Eye 04:57
3. Beings of Entropy 05:58
4. The Aphotic Dread 07:04
5. A Parasitic Universe 06:22
6. Toward a Malignant Bliss 06:56
7. The Grasp of the Host 04:52
8. Void Indoctrination 06:08
9. As Dust and the Animal 10:30
Total 59:18
#4はyoutubeにリンクしてあります。
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