The Fog / Perpetual Blackness (2016)
ドイツ産ドゥームデスメタルバンドThe Fog の1stフルアルバム。
Memento Moriからリリースされた。
同時期にDeliriumのZzooouhhを再リリースしていることから、
同レーベルはその同時期にこういった音楽への思いが募ったのかもしれない。
地下臭の濃厚な極初期系デスメタルをリヴァイバルするジャーマンデスメタルバンド「Beyond」のベーシストがGt Voで参加するThe Fog。
バンド名はGoatlordの楽曲名から頂いているようだ。(1st#3The Fog)
音楽性としては、煙色の世界に反り立つ枯れ木のジャケットがそれを物語るかの如き、いと侘しきドゥームデス。
ひと度聴けばやはり、超遅くしたBlasphemyのようなハードコア感覚、嗄れたグロウルに加え、伝統的なドゥームメタルのフィーリングに富んだ演奏力。
そのミニマムな楽曲の構築力はスラッシュ由来の過激さを徐々に摩耗することによって、
逆説的に洗練されることとなりドゥームデスの完成形の一つを構築するに至った時点でのGoatlordを彷彿とさせるところがあるし、
微量にコンセプチュアルな要素を漂わせる所には、そのメンバーがやっていたDoom Snake Cultの妖しさを感じさせる。同じドイツのバンドとしては、シンセサイザーの音色を排除したTorchureといったような感があり、その遅さに重きを置いたオブスキュア且つアンダーグラウンドな趣きが味わい深いものだ。
ただそのどれにもあるスラッシーな感触は鈍く、彼らの音像はどちらかというと、乾いたドラミングに象徴されるWinterのようなハードコアライクな動性を以てして畳み掛けられるのが特質となっており、
原初的なドゥーム/デスのマテリアル、空気感が収められた本作の概観と完成度の高さには、味わい深さを越えて感動すら覚える次第。
そもそも論だが、舗道に吐き捨てられた吐瀉物のように、
誰も目もくれないが、どうしてもその気配を感じさせ瞥見させる存在感に満ち溢れた、ミニマムで殺伐とした土壌の上に重苦しく垂れ出るドゥームデスは、
Hellhammer/Celtic Frost傘下或いは同じ潮流の中でのGoatlordやDream DeathやWinterがその音像を鈍化させていったことにより、
また、それに並行してUSイリノイ州シカゴのCianideやフロリダのAutopsyやNYのSorrowらが、直接的にドゥームメタルの仕組みをデスメタルに組み込ませたことにより産声を上げた。ヘビィメタルのサブジャンルの一つであるデスメタルの中での細かな差異だ。
00年代に入ってもなお、オーストラリアのドゥームデスメタルバンドThe Deadがスラッヂメタルの仕組みをデスメタルに組み込ませたり、ノルウェイのObliterationやフィンランドのSwallowedが広義的なブラックメタルの仕組みをドゥームデスに組み込ませる等して、意図せず流れ行く時代の中で確実に、そして常に排他的な姿勢を以てして、多様な発展をしてきた。
そして本記事での焦点となる、このThe Fogに関しては、その近年の発展を見せるドゥームデスメタルとして、
一切の装飾を排斥したとも言うべき、純然たる初期ドゥーム/デス界隈のみに対しての過剰なまでの愛情が、デンマークの猛臭Undergang等と同様にすこぶる渋く巧い。
やはりその辺の目の付け所がアドバンテージとなり、彼らを名作1stを連発するMemento Moriに匂わせたのだろう。
そしてこれは、近々アンダーグラウンドデスメタル界隈を少し沸かせる主因ともなってくることだろうと思う。質実にドゥームデスを演じながらも何より終盤で聴けるプログレ的なリフワークや、作中全体に漂うハードコアな感性に酔いしれる驚異的作品なのだ。
曲目は、
1. Inaneness 09:24
2. Crawling Doom 03:18
3. Entropy Pillars 06:16
4. Creeping Lunacy 04:41
5. Gloom Shoals 07:12
6. Perpetual Blackness 04:53
7. Grievous Scourge 12:26
Total 48:10
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