2
Todtgelichter / Rooms (2016)

ドイツ産アヴァンギャルド/ポストブラックメタルバンドの5thフルアルバム。
Supreme Chaos Recordsからリリースされた。

このTodtgelichter、1stではトレモロ主体のシンプルなアトモスフェリックブラックといったような音楽性であったが、
2ndではトレモロを主軸としながらも、随所にサイケデリックなフレーズを用いることによって、A Forest of Starsの概観を彷彿とさせる特異なものとなり、
10年の3rdにて、女性ボーカルを迎え表現の幅を広げると同時に音質も向上し、激情系ポストブラックと90年代フィーメールゴシックのトラディショナルを掛け合わせた先駆者的音像を提示。
そこからのサウンドは、完全にポストブラックの枠組みの中で語られるような特質的な音像への変遷を行ったと言え、5thとなる本作では、その最新型が起源しているようだ。

尚、女性ボーカルものに於ける先進性とブラックメタルの親和性が融解した作品については、
ポリッシュブラックのLux Occultaや元Mayhem現Aura NoirのBlasphemer氏が首謀していたAva Inferi等からお察しいただけるように思うが
本Todtgelichter / RoomsでのブラックメタルとそのMarta女史に於ける諸化学反応については、
The Third And The Mortalの血脈に連なる魅惑的かつ情感的な女性ボーカルの歌唱やその金切り声と、男性ボーカルの哀切の濁声や金切り声の対比、
それに寄り添うように、アヴァンギャルドブラックの役務を果たすべく、時にヘビィで時にソリッドで時にトラッドで時にフォーキッシュですらあるバッキングが主軸となり、
中高音域でのトレモロとグルーヴを際立たせる単音リフやカッティングリフが、哀感や激情や悠然としたムードやサイケデリックなムードを伴い展開されて行く。

曲間にはシンセサイザーによって織り成されるクラシック音楽への傾倒やエレクトロニクスの要素も存在し、
これ等の因子一つ一つの主張がパズルのピースを嵌め合わせていくことにより、アルバム全体に於いて非常にユニークで劇的な展開を形成している。

得てして特異な音楽性を標榜するメタルバンドと言うのは、其の後普遍的なロックないしはジャズやトラッドミュージックのフィーリングに目覚める時期が来るのだろうと思う。
単純に♯9は冒頭の派手なシンセの音色からして、やたらにプログレッシブロック的でもある訳なのだが、
本作の小気味良くタメを効かせたリズムセクション、並びにそのブラックメタルから逸脱した豊満な手法の数々は、バンド自体がそういった熟成や充実が見て取れる時期に差し掛かってきていることを窺わせる。
と言うことは本作、昨今の様々な音楽のトラディショナルを尊重した上で新たなブラックメタルの形を模索する、非常に面白い作品であるのではないだろうか。

曲目は、

1. Ghost 07:58   
2. Schrein  08:39
3. Lost  03:48
4. Shinigami  06:16
5. Necromant  03:19 
6. Zuflucht  06:40 
7. 4JK  05:37
8. Origin  06:06 
9. Pacific  02:54   

Total  51:17