The Lion's Daughter / Existence Is Horror (2016)
USはミズーリ州セントルイスのブラッケンドスラッジメタルバンドによる2ndフルアルバム。
Season of Mistからリリースされた。
彼らの本作迄に渡るバンド遍歴としては、07年に結成、11年に2枚のEPと、Primitive Manとのスプリット作が記憶に新しい激重ドゥームのFisterとのスプリット作を以てして、昨今の激重界隈に浮上し、12年に1stフルをリリース。
その後、13年Indian Blanketなるネオフォークバンドとのコラボレイションと、14年スラッジ/ポストハードコアバンドNights Like Theseとのスプリット作を挟む形で、本2ndがリリースされた。
またこちらは、Pissfork Anticulture、Good Die Young Musicといったドゥーム専門の小規模レーベルからSeason of Mistへの移籍作ともなっている。
その本作は、スラッヂリフによる暴動を主とした憎悪系激重スラッヂの初期から、
スプリットやコラボレイションといった、相手方を尊重する場でのみ誕生し得る、独特の緊張感に内在した様々な暗喩的手法、
その醸し出される因子を脳や肺一杯に吸い込み、別の次元へ昇華したかのような、時代の先端を突き進む充実した作品となっている。
それも圧倒的静的な音楽を経て、聴かせ方に磨きをかけたような素振りでである。
内実としての本Existence Is HorrorでのThe Lion's Daughterのブラッケンドスラッヂは、
FisterやFistulaのようなノイズ/ブラックの要素があるドゥームスラッヂみたいな惨憺たる重さや、
EibonやThouやAmenraのような朴訥とした民俗学的グルーヴに深い暗黒が宿るものではなく、
至ってLord MantisやPrimitive ManやらIndianのような終末や死をたたえた激重でありながら、
本質としてはハードコアの素養とDeathspell Omega影響下の不協和音的な妖しさの融解したスタイルを感じさせるものとなっており、
それはCoffinworm系列のヒップスター指数の高い音楽性と言える。
尤も、画一的な音楽性ではなく、人の暗黒の中を彷徨う軌跡が図らずともその者の精神に深みを齎すように、
このバンドに関しても、地下激重界隈で培った、
ブラックメタル/ハードコア/ポストメタル/フォーク/ノイズといった様々な音楽への批評性の高さから、
The Ruins Of Beverastみたいなブラッケンドドゥームの要素と、クラスト/ハードコア要素を折衷したような、
闇の叙情性による殺伐とした陽性との共存を巧く創出しており、
音像において異質な佇まいを見せ先鋭的でドープな概観を構築している。
そして時折Agoraphobic Nosebleedが用いるような不穏で有機的なドローン空間にて幕を開ける本作の楽曲群は、
やはりそのどれをとってもクオリティが高く、味わい深いといったオチだ。
潮流を見せ始めたジャンルにありがちな無個性的なバンドの有象無象に紛れることなく、
ブラックメタルの親和性とスラッヂ/クラストのアグレッションの裡に新たな形を提示する姿勢が何より尖っており、
Coffinwormよりも薄らとポジティビティを感じさせるのは、その辺の面目躍如であろう。
曲目は、
1. Phobetor 01:32
2. Mass Green Extinctus 03:09
3. Nothing Lies Ahead 05:08
4. Dog Shaped Man 04:02
5. Four Flies 04:24
6. Midnight Glass 03:39
7. The Fiction in the Dark 02:57
8. A Cursed Black End 03:55
9. They're Already Inside 05:06
10. The Horror of Existence 05:30
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