North / Light the Way (2016)
USはアリゾナ州のポスト/アトモスフェリックスラッジメタルバンドによる4thフルアルバム。
15年にProsthetic Recordsへ移籍し一枚の1EPをリリースしており、今回は移籍後初のフルアルバムとなる。
彼らの音楽性は、PelicanとNeurosisの折衷スタイルとも言うべき、ポストロック影響下の澄んだ叙情性の元で醸し出される悠然たるアトモスフィアと、その憂愁とダイナミズム溢れるバッキングに、
AmenraやAtlas Moth等に代表されるヴァイオレンスなヴォーカルを紡ぎ合わせたものである。
更に、今作ではよりヴォーカルの表現力が高まっており、
今までの獣の様な吐き捨て声の他にも、Neurosis直系の民俗学的グルーヴを煽る哀切の歌唱も聴くことが出来る。
言わば、憂愁の叙情性に哀切の歌唱が乗せられるような、慈しみ溢れるサウンドに深化しているようだ。
そしてそれは言うまでもなく昏く閉塞的な世界観ではない、誰もが心の奥底に秘めた雄大で神秘的な世界に光を当てたかのような超自然的サウンドスケープとして存在していて、
地の底から天辺まで激重で支配される本作を聴けば、轟音の洪水に漂流したり、ディストーションの幽玄なアルペジオに溺れたり、
時折ニューオリンズ産スラッジドゥームのテイストや魅惑的なリフに遭遇したり、その天上的な空気感に至福を憶えたりすることが出来る。
展開として若干のぶつ切り感があるものの、それだけ小技の効いた多彩なポストメタルのリフワークは、
その全てがアルバム全体を覆うリアリスティックな人間の情念の中で活き活きと動き続けており、ユニークな世界観を導き出している。
ともあれ結果的に見やればCult of LunaやNeurosisやIsisのアーロンターナー氏等が、常に先鋭的なアプローチを提示して来たこのポストメタル界隈で、
バンドの深化の過程に於いて、此処までIsis/Neurosis/Cult of Luna/Atlas Moth/Pelicanといった諸ポストメタルバンドの要素要素を、
メタルの様式美という概念を汲み、合理的に継承してきたといえるこの音像。
それは逆説的に珍しいものだが05年からの活動の上で深化を続けてきた強かな音像に違いは無く、捉え方として、何か人の心に残っている、既存のポストメタルの良さ一つ一つを、再度思い起こさせる所がある。
本作はそんな音楽愛に満ちるマテリアルが込められた、質実なポストメタル作品に仕上がっている為、
特質的な面白さとは別次元の、やっぱいいなと思える素養の数々が伝播する結果幻視し得る、この尊い世界に一度触れてみては如何だろうか。
曲目は、
1. Moonswan 02:23
2.
3. Weight of All Thoughts 06:57
4. Earthmind 05:54
5. Primal Bloom 04:32
6. Rhef Anad 02:14
7. On a Beaten Crooked Path 05:57
8. From This Soil 07:43
9. Relativity 02:14
Total 46:31
♯2はyoutubeにリンクしてあります。
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