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Purgatory / Omega Void Tribunal (2016)

ドイツ産デスメタルバンドの8thフルアルバム。
スペインのGraveyardやBombs of Hades等を擁するドイツのデスメタルレーベルWar Anthem Recordsからリリースされている。

93年結成からコンスタントに活動を続けるバンドで、13年には活動20周年を記念して節目の編集盤もリリースされた。
本作はそれから心機一転し、活動20周年を迎えた彼らにとって初めてのオリジナルフルアルバムとなる。

バンドの音楽性としては、初期はIncantation系列の暗鬱な雰囲気のあるデスメタルをプレイしていたが、
4年以降はVaderと近似したスタイルの、突進型かつスラッシーで扇情的なリフワークにより聴手を恍惚とせしめるデスメタルをやっているようだ。
長らくそのスタイルを続けていた彼らは、なにかデスメタルの哲学を深耕するような気概を感じさせる。

しかしながら本作の音像は、これに少し毛色が異なっており、初期に存在していたダウナーな気配のリフレインが、
そのままIncantationやFunebrarum等の惨憺たるデスメタルの血脈の流れを汲んだような情調を漂わせ始め、更に同じくして初期にやっていた、ギタリストもボーカルを兼任するツイングロウルスタイルも復活し、惨憺たる情調が劇的な展開力を備えブチ抜けるようになった。

これを聴いた当時の私の興奮をそのまま陳述するが、
「こいつは20年以上にも及び培ってきた自己にある死の連想性と活動の内省の上での長所を総動員した結果として、荒廃しきった惨憺たる世界のドラマに情景を据えて展開される代物となっており、つまるところではそのこもりがちな音質すら、瘴気の濃厚さを想起させる程の説得力を伴っている。また、バンドのアイデンティティが憎しみや排他性に重きを置いたものであるだけ、よりその思想へ純粋な形を供えて畳み掛けられる本作は、バンドの活動歴が長くなるにつれ陥りがちな傾向としてある、
内省的な創造性の環流の中に於いて飛び抜けて突飛なことはしないながらも、#3での闇のコーラスや終曲#8での圧倒的ブラストビートの裡に冥界からの瘴気と呻き声を孕ませぶつ切りで終局を迎える手法や、
アルバム全体でのVaderとIncantationを折衷させたようなリフワーク及びその陶酔すら覚える死の気配等から、新たな自己流の暗鬱の形を模索する姿勢が窺えるものとなっている。
そしてその模索する姿勢に憂愁の陰影すら帯びているバンドの哲学の中には、ダークブルータルデスを標榜するFunebrarumや、単純なIncantationやRottrevoreと言ったブルータルデスの母体的音像からではなく、
そのブルータルデスの母体的音像から影響を受けたツイングロウルのジャーマンデスメタルから純然たるVader型デスメタルへの変遷を経た、複雑怪奇にして猥雑で暴虐的なOSを、更に劇的なダークサイドにアップデートする混沌とした脱構築の妙があるのダッ!」

ドイツのデスメタルバンドはMorgoth然りObscenity然り、次第に黒い叙情性を露呈し始めるものが多い。
Purgatory自体は昔から音像だけでなくIncantationのTシャツ着用する等して(かわいい)その嗜好を表明していたが、
やはり終着点としても、その初期のスタイルにあったようだ。
そんなジャーマンデスメタルの様式美とIncantation系列の陰惨なデスメタルへの憧憬が交差するOmega Void Tribunalは、節目となる活動20周年後初のオリジナルフルアルバム及び荒廃と破滅のサウンドトラックとして、更なる今後の躍進を期待させる、もの凄い暴虐性を感じさせる代物に仕上がっているのだった!

曲目は、

1. Devouring the Giant  04:46   
2. Prophet of Demonic Wrath  04:01   
3. Chaos Death Perdition  04:50   
4. Nemesis Enigma  05:25   
5. Codex Anti  03:48   
6. The Curse of Samhain - Part II  04:22   
7. Via Dolorosa  03:38   
8. The Archaic Evil  05:07   

Total  35:57  

#3はyoutubeにリンクしてあります。