51ZTvl8kkVL__SY300_

もとい16年の上半期ベストです。
私個人が上半期に聴いた激重鋼鉄音盤から20枚ほど選出させていただきました。
選出は相変わらず好き度になります。

今年は、どの界隈も良作をコンスタントにリリースしており、
誰の作成した年間ベスト記事も違った選出になってくるような、一人ひとり個性が出せる位の良質新譜の圧力といったらないです。

以上軽い振り返りでございまして、下半期もBrain DrilとかUlcerateやSubRosaやObscure Sphinx等々色々出てきそうなので震えますね。

恥ずかしながらレヴューしていないのも載せてるんですが、
一応アドバンテージ的なものは書いてありますので、あしからず。
それでは、今後ともご閲覧賜りますようお願いいたします。

バンド名/アルバム名
(国名/作数/レーベル/ジャンル)の体で、
ジャケットはyoutubeにリンクしてあります。DIES IRAEさんのように。


08f77769fbaf566facf094ee7a054c7c_full
1、Deftones / Gore
(US/8th/Warner Bros/ニュー/オルタナィブ/ポスト)
4作目の路線から直ぐに軌道修正し、今まで元のオルタナティブメタルの異端を今まで演じ続けていた彼ら、
近年Isisメンバーとの交流を経てPALMS結成に至り、その前にリリースされた恋の予感どちらにもその音響系の手法は垣間見え、また同時期にやっていたCrossesというチノモレノ氏の別プロジェクトにもオルタナティブメタルの亜流とも言える本質の多様性が伺えるものでしたが、
愈々ポストIsisという言葉が流行っていた時代を遠い過去にする程、Isisの血脈を汲んだ高いポストメタルへの批評性及びその濃厚なアプローチがこの本筋に現れたようです。
オルタナティブメタルで常に先進的な姿勢を持ってして自己の音像を再構築し続けて来た彼らによる、今尚時代の先端を行くこの最新作、
やはりずっと好きなバンド/人物の最新作ということもあり、長期的な愛聴盤になっております。

6
2.The Body / No One Deserves Happiness
(US/5th/Thrill Jockey Records/Daymare Recordings/エクスペリメンタルスラッジ)
激重音楽界隈の最先端を行くオレゴン州を拠点に置く人間放棄エクスペリメンタルスラッジデュオThe Bodyの最新フルアルバム
「最も粗悪なポップアルバム」なるものがコンセプトの本作は、女性ヴォーカルの表現の妙や、ヴァラエティ豊かな楽曲の一つ一つの主張によるユニークかつ猥雑な概観を作品の印象に落とし込みつつ、
ストーリーの裡に陰性の一貫した情調を保った、完成度や芸術性の高い代物として、
これまで培ってきた排他精神に代表される孤高の実験性、その行先に起源する極上の粗悪品に仕上がっております。

10
3.Ehnahre / Douve
(US/4th/Kathexis/エクスぺリメンタル/アヴァンギャルド/ブラック/デス)
電子音楽界への漂流を続けるKayo Dotとは裏腹に、Kayo Dotの不穏らしきことを本格的にやり始めた、
Kayo Dotの元メンバーが率いるエクスペリメンタルドゥーム/ドローンプロジェクトのEhnahreによる今年一の奇作。
作中に前々作のフリージャズ性や前作のドローン性を漂わせながらも、此処へ来て全く持って訳の分からない先鋭的な不協和デスメタルの素養や、
異能さを引き立てる気狂い染みたヴォーカルワークや、暗鬱に微睡む鍵盤の美旋律に恍惚の表相を浮かべる、
何処をとってもコンテンポラリーなアングラなヘビィメタルへの批評性が高い奇盤怪盤の類いが素晴らしく。

231566
4.Jesu & Sun Kil Moon / Jesu/Sun Kil Moon
(US/コラボレーション/Caldo Verde Records/ポスト/エクスぺリメンタル/フォーク)
Godflesh復活後このプロジェクトの名を久しく聴いておりませんでしたが、
静謐なスローコアの第一人者Red House Painters のフロントマンMark Kozelek氏の別名義であるインディーフォークプロジェクトSun Kil Moonとのコラボレーションにて
再び最高の形でその名前を感じることが出来たように思える良コラボ作です。
神聖なる轟音/ひずみのアンビエンスとSun Kil Moonの言葉を主軸に、朴訥とした語りからメロウな部分ではより情感的になって行く歌唱や、
緩やかに流れ行く郷愁を煽る情景が愛おしい一枚と成っております。

7
5.Chthe'ilist / Le Dernier Crepuscule
(Canada/1st/Profound Lore Records/アヴァンギャルドデス)
Beyond CreationのDrとDemilich系のテクニカルかつ病的なデスメタルバンドZealotryのGt/backingVo等により構成されるカナダ産デスメタルバンドの1stフル。
超絶技巧系テックデスメタルに比肩する技巧力と、グロウルのコーラスとハードコアライクなグルーヴが起伏に富んだダイナミズムを演出し、最先端のデスメタルを構築。
Demilich系の病的なデスメタルをテクニカル&ドラマティックといった現代流に再構築する点ではほぼZealotryと変わらないものの、
各パートがひしめき合うような迸る主張より、楽曲の緩急のつけ方や起伏と言った高い展開力構築力を打ち立てる技巧力と、
模糊として暗澹たるメタファーで覆われる芸術性との調和を高い次元で保った作品に仕上がっているようです。

8
6.Howls Of Ebb / Cursus Impasse: The Pendlomic Vows
(US/2nd/I, Voidhanger Records/ブラック/デス)
USサンフランシスコのブラックメタルと言うだけでお察しな排他的ブラックメタルをやっているバンドでして、
前作よりより緻密に畳みかけられる、LeviathanやKrieg等から垣間見ることのできる前衛ブラック/ノイズアプローチに、Morbus Chronのオールドホラー的マインドのあるデスメタル要素を落とし込んだかのような、冥界サウンドが琴線に触れました。

3
7.Barbarian / Cult of the Empty Grave
(Italy/3rd/Hells Headbangers Records/スピード/スラッシュ/ブラック)
High Roller臭が物凄いHells Headbangers在籍のブラック/スピード/スラッシュメタラーによる3rdフル。
metal-archivesのレビューに在る初期Running WildとHellhammerのイメージと言うのが似つかわしいアートワーク含めた、
シンプルなスピードメタルと原初的な陰性の混沌とした融合と、その後続の脱構築の妙が最高で、
一切の装飾を排斥して畳みかけられるタフネスに、HellhammerだけではないKilling Joke~Amebixの流れ等も彷彿とさせるダウナーでミニマムなグルーヴも相まいシンプルイズベストな名作に。

00
8.Cobalt / Slow Forever
(US/4th/Profound Lore Records/ポスト/ブラック)
元々音楽性としてNeurosisみたいなことをブラックメタルの世界でやっていたバンドで、2枚組の大作として発表されたこの作品もそのアトモスフィアを受け継いで入るのですが、
インストゥルメンタル面では、いなたいクラスト風味を効かせたリフワークが支配的になってなり、悠然として展開されて行きます。
これには東京の暮らしに慣れてきた当時の私に長閑過ぎて、最初のころ余り良さが解らなかったのですが、
聴いていくにつれて、時間に詰められているからこそ時間を忘れさせてくれる音楽の良さを再認識させられ、結果長いこと聴いていた作品になります。
再結成時のAmebixみたいな作風を2枚組で徐々に追い詰めていく陶酔や貫禄すら感じさせる本作は、やはりメディアの方でも推されているようで。名盤なのですよ。
また本作から新たにex-Lord MantisのVo、Charlie Fell氏が加入していて、彼の声帯が引き千切れるような獣染みた咆哮は健在で何よりです。

8convulsionscover
9.Ritual Chamber / Obscurations (To Feast on the Seraphim)
(US/1st/Profound Lore Records/デス/フューネラル)
昨今のブルータルデスメタルの礎を築いた、IncantationやImprecationと並ぶ時代の衆の一つであるInfesterでドラムを叩き、
過去のEvokenでキーボードを鳴らしていたNuminas氏による暗黒夢幻室内楽プロジェクトの1stが本作。
AtaraxyやNocturnal VomitやHalberdよりも内省的でGrave MiasmaやNecros Christosよりも業の深い、自己内的な暗黒世界へ深く深く沈殿して行き、聴き手へ吐瀉を撒き散らし続ける、
後続共を黙らせる凄惨な説得力を持った鬱屈として哲学的なデスメタルの、一切の光の届かない冥獄界の惨澹たる情景が眼裏へ広がり行くかの如きは、
敢えて全く合わない音の連なりを用いて音楽性と呼べるものから遠く離れていくような所一つとっても、デスメタルの暗黒性を拡張してきた才人の懐の深さを感じさせますし、
そういう否定的な手法を用いていながらにして、暗鬱な飢餓困憊悪疫のサウンドスケープを巧く導き出しているようなところに陰性への批評性の高さも窺える、
その世界へ時折差し込まれる虚ろ気で幻想的なキーボードにも対比の美学を感じさせる、要所要素にぶち込まれる病的な音階でのギターソロといった聴かせ所も心得ており、
総ての音に意味があるといった、Numinas氏の独創性が際立つ快作になっております。

482
10.Funeral Moth / transience
(Japan/2nd/Weird Truth Productions/フューネラルドゥーム)
ここ日本に於けるフューネラルドゥ―ムの総本山Weird Truth Productionsの設立者、Makoto Fujishima氏率いるFuneral Moth。
Worship系の鬱屈としたフューネラルドゥームと共振しながらも、お国柄のマインドを巧く醸し出すアトモスフェリックな作風が心地よく、
音の水面に寂寞感寂寥感を映し出しながらも、あくまでも自然的な雰囲気が絶妙に死にたくならない深遠な情調が素敵でした。
バンド名の蝶一つとっても日本的なデカダンスを感じさせてくれていて、これも好きなバンドだけ心に残る一枚と成っております。

2
11.Seven Sisters Of Sleep / Ezekiel's Hags
(US/3rd/Relapse Records/ドゥーム/ブラック)
Eyehategodの憎悪を増幅させるSeven Sisters Of Sleep、
ハードコアライクな衝撃に孕むスラッジドゥーム由来のダイナミズムには
初期のLord MantisやInter Arma系列のブラッケンドスラッジの聴き心地もあり。
アルバム全体に於けるアーティスティックな憎悪の撒き散らしっぷりが気持ち良く素敵です。

7c809427d2
12.Aluk Todolo / Voix
(France /5th/Norma Evangelium Diaboli/ブラック/クラウトロック)
荒涼感を主とした漠たるブラックメタルにクラウトロックの実験性を織り交ぜた音楽性のブラック/クラウトロックバンド
全体として、フュージョンや疾走系フリージャズの方法論を用いた前衛ブラックメタルによりトランス感覚を誘発させるスタイルの本作は、
よりクラウトロックの実験性を主軸に据えて構築されるエクスペリメンタル濃度の濃厚なトリップ音源と成っていて、
うちはこれを五畳一間の狭い部屋の中で延々聴ゐておりまひた。本当インストなだけ延々と。


_DSC7966
13.Suspiral / Delve into the Mysteries of Transcendence
(Spain/1st/I, Voidhanger Records/ブラック/デス)
プリミティブな暴虐性からドス黒い瘴気を噴出するTitanblood系列のブラックメタルに、
不協和音による空間アプローチも垣間見せるヒップスター指数の高いこの作品がまた出色の出来で、
暴動性と空間的な静的手法の対比の構築美による、純然たるカオスに終日魅せられておりました。
Impetuous Ritualと同じように暗黒への盲目的な帰依が結実/放散していく感覚もあり素敵ですな。

30cxaqb
14.North / Light the Way
(US/4th/Prosthetic Records/ポスト)
普遍的なポストメタルの概念をここまで様式を汲んで高次元に構築するバンドも、ポストメタル界隈では珍しような存在でして、
Pelicanの構築力やMarriagesの奇天烈なアプローチやNeurosisの哀切の歌唱や激重等が、暗所に焦点を当てたような陰影礼讃志向により、
冷えた洞穴から徐々に広がっていく悠然として雄大なサウンドスケープに化ける本作。
目新しさを犠牲にして既存のポストメタルをどこまで突き詰められるかと言うところに重きを置いたようなサウンドで、
そう言う意味では、ポストメタルに興味が在る方全般にお勧めできる心に残る名作になるのでしょうかね。

4knock1
15.Convulse / Cycle Of Revenge
(Finland/4th/Svart Records/デス?)
独特のデスメタルを進むフィンランドデスの重要ファクターConvulse の復活後2作目は、
Svartのレーベルカラーに合わせたような東洋的なメロディーを付加したオカルトドゥームライクなデスメタル作品で、初期に在った病的な要素は既に消磨しながらも、静的な澄んだ音色やダイナミックなリフワーク等に代表される起伏に富んだ楽曲の展開美や微細な緩急のつけ方には、今なお音楽愛の深奥を進む気概が窺え、相変わらず音像のふり幅が大きいバンドの深淵なる世界を覗かせる、奇っ怪な音楽性に脱帽しっぱなしだった一枚。
とんでもないグロウルだけは初期から一貫していて、この全体のデスメタルのデスメタル足らしめるデスメタル性の引きの巧さがまた胆です。

00jig-ai
16.Oranssi Pazuzu / Varahtelija
(US/4th/Svart Records/ブラック/クラウトロック)
サイケデリックブラックメタルを体現するバンドでしたが、
本作の音像はDarkspaceにブラッケンドクラウトロックと形容させるほど、空間的実験的体験的なものと成っております。
ソニックブーム的な疾走感と斜に構えた拍子がDeathspell Omegaとはまた違う、そのクラウトロック由来なサイケデリックに侵食されて行く前衛的な空間演出が好きですし、
多彩なヴォーカルワークの中でも、時折ナクトミスティアムみたいな悲愴感を感じさせる狂おしさがもっと好きです。

1b17d25e64a3a14ff59d231076867825
17.Purgatory / Omega Void Tribunal
(Germany/8th/War Anthem Records/デス)
ジャーマンデスメタルって正直結構地味で、このバンドも音楽性的にベイダー、ヴェイダー言われていたバンドなのですが、
そもそもVaderらしきことできる時点で、デスメタルとしては相当クオリティが高く、
今回はツイングロウルと初期のダウナーな激重暗黒リフが回帰して来ている印象も在り、非常に激アツなIncantation案件でした。

51LvFNH2rJL
18.Virus / Memento Collider
(Norway/4th/Karisma Records/ロック)
Dodheimsgard/Ved Buens Ende/Cadaver/Ulver/Satyricon等にちょろちょろ参加してきたAura Noirの奇人Czral氏がGt,Voを務めるアヴァンギャルドロックバンドで、
Ved Buens Endeにあった難解な路線を踏襲し、最近のDodheimsgardやその界隈のドローン空間と同じ空気感で畳みかけられるアヴァンギャルドジャズロックは変わらず、
この選民意識を煽る昏い異能サウンドがすこぶる良きです。

43fabbdf792ec7a6e06d8112f791ca1a
19.Bloodiest / Bloodiest
(US/2nd/Relapse Records/ポスト/スラッジ)
これもNeurosis系のポストメタルバンドなのですが、これに関して言えば例えばNeurosisがToolに蝕まれて行くような概観が心象に残っていて、
民俗的グルーヴによるトライバルアートをドラスティックに転換して、ダークな情景を映し出す都会的で高い芸術性を誇るバンドがBloodiestなのであるように思ひます。
そのBloodiest足らしめる美の系譜に連なる、先進的な暗黒の抒情詩に暫く支配されておりました。

051e6b8be0c727d6ce1e5fec2809e739
20.Toluca / Darvo
(Russia/2nd/Independent/ポストブラック)
ロシアのDeafheavenとも言うべき、‍ロシア語での激情型ポストブラックを聴かせる4人組。
ただそのままDeafheavenの世界で考察したり、生理的に若手の粗削りな部分で厭ってしまうには惜しい音源で、ロシア語でヘイトやデプレッションを撒き散らす歌唱にはフューネラルドゥーム大国の面目躍如を感じさせ、
また非英語圏&フューネラルドゥーム大国だからこそ土着性として自然と醸し出されるところのある、Bethlehemを源流に置くドイツのシンジケートと共振する陰性の遺伝子みたいなものが良かったです。

それではまた、
ご閲覧頂きありがとうございました。