4knock1

Revocation / Great Is Our Sin (2016)

USはマサチューセッツ州ボストンのテクニカルデス/スラッシュメタルバンドの6thフルアルバム。
Metal Blade Recordsからリリースされた。

Cryptic Warningなる3人組スラッシュ/テクニカルデスメタルバンドを母体にして、06年にRevocationへ名前を変更し活動を続ける彼ら。
彼らと言えども12年にオリジナルベーシストが脱退し、15年にオリジナルドラマーが脱退しており、
その都度メンバーを補填しつつも、現在はDavid Davidson氏 (Gt,Vo)が独りRevocationの屋台骨を支えていることになる。

初期の音像に関してはCryptic Warningを踏襲するスラッシュメタルの過激な良さに、テクニカルデスの緻密な攻撃性やカオティックを紡ぎ合わせた代物として、Havok,meets Pestilenceといった具合の様々なアプローチを可能にする一貫した多彩さが在ったのだが、
10年にArtificial Brainと言う、不協和を礼讃するUSテクニカルデスメタルバンドの、Dan Gargiulo氏(Gt,Vo)が加入し、4人編成に変更された後は、音像にそういう傾向も感ぜられるようになった。
加入してからは、所謂Killing Joke由来の冷徹な雰囲気の不思議な音色から影響を受けた、VoivodDOOMの様式にも連なる手法と呼べるような叙情性が醸し出されるところもややある。
最近の彼らは、そこのところが、聴き難さになるか、中毒性を感じるかで好き嫌いが確りと分かれるタイプだ。

尤もその手法には、長年積み重ねられてきた脱構築の連続性が存在していて、
連続の反芻にある内実は、前衛的なスラッシュメタルを取り入れたテクニカルデスの過去の遺産、試行錯誤が多く存在している。
スラッシュからテクニカルデスへの派生していく歴史を鑑みれば、最初の方には、Deathとその同時期存在していたイーヴルでハードコアな連中がスラッシュメタルを更に激しくしデスメタルを誕生させ、
その激烈に歪んだダウンチューニングの変奏を喜ぶかのように、ジャズの要素を直接取り入れたAtheistや、兎に角技巧的なリフで界隈の度肝を抜いたオランダのPestilence等が、多様なデスメタルの実験を試みた。
そしてまた月日は流れ、別の潮流で英国でゴシックメタルが、北欧でメロディックデスメタルが生まれ落ちた先に、
米国でDeathが音作りから何まで徹底した聴かせる意図を以ってして、それら(既存のデスメタル)をオールドスクール、或はアンダーグラウンドなものにした。アンダーグラウンド化には、メディアの黙殺による相乗効果もある。

00年代に入ると、現在Voivodにギタリストが在籍し、同バンドのBrain Scanをコピーしていたこと等からも影響が窺える、既に解散したカナダのテクニカルデスメタルバンドMartyrや、
Deathの展開美にクリスチャンのスラッシュメタルバンドBelieverの叙情性を取り入れたObscura等が、また新しいパターンを提示してきた。

Revocationの始まりは当初そういった歴史に存在する、技巧的なデスメタルバンドの代表例が例に出されるような、数ある中の一つに紛れながらも、
好事家筋からは、Havok等の新しいスラッシュメタルの潮流の中でも語られるような一風変わった存在でもあった。
14年の前作が、テクニカルデス/スラッシュメタル界隈から、初期Metallicaの構築美とリリカルな冷気を醸し出す傑作として、先人や有識者から可愛がられたことにより、
界隈でより独特の存在感を発露し始めたが、それから2年振りとなる待望の本作もまた、00年代に於けるスラッシュメタルの様式を汲んだ、テクニカルデスの系列を端正に準えながらも、
今回はよりモダンなデスメタルとしての重みを意識した音作りにより、メロディを際立たせつつも激しさやダイナミズムを感じさせる作風となったようだ。
このアプローチは、緻密さに重点を置きヘビィネスが疎かになることの多いテクニカルデス界隈に於いては細やかな差異だが、一つ重要な所であるように思える。

内容を反芻すれば、悪疫のカオスを題材とした歌詞と、それを際立たせる高度なバッキングにより、シニカルな情景を演出し展開されて行く。
初期のMetallica系列の半音下げのコード進行と、過去のテクニカルスラッシュを現代版にアップデートしたような技巧的な単音リフを組み合わせることにより、冷え冷えとした情調を漂わせる展開美構築美を主として、
情感的なギターソロや不協和スレスレのギターコードもありながら、終局にはバラード風とも言うべき大仰な展開も用意してある。カーテンコールではSlayerカバーもあり用意周到と言ったところだ。
スラッシュメタルの観点から言えば、ここまで名リフが多ければ言わずもがな最高であるし、テクニカルデスメタルの観点から見れば、此処まで技巧的で独自性を感じさせるアプロ―チも最高に他ならない。

ただ全体的には、同じような起伏の楽曲が続いていくという感じ方も無くはない粒感の構成だが。
冷えたリリカルは聴く者によっては郷愁を煽るものであり、深々と冷え行く秋の終わりに聴けばまた違った慨嘆が漏れてくるだろうと思う。
Prurient等が評価される今時、ここまでオーセンティックなメタルの手法で冷厳な情景を導き出してくる作品もそうない。

ブックレットに記載されている内容だが、本作は♯6のギターソロで元MegadethのMarty Friedman氏が参加し、
前作に引き続いて、Shadows FallSuicide SilenceKataklysm等を手掛けてきたZeuss氏とRevocation自身によるプロデュースの元制作された。
アートワークも前作に引き続き、Tom Strom氏なる人物が手掛けている。この辺りの独自的な起用も、独創的な世界観を導いている様に思える。

因みに悪疫のカオスを題材とした歌詞は以下のようなものである。
直訳すると良く判らんくて多少いじっているが、この歌詞を基に聴くと‪何かポリティカルめいたものではなく、イントロから寓話的で悲劇的なもののように感ぜられる。
何はともあれ最近はこの作品ばかり聴きまくっている次第。今後も頑張れRevocation!!

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♯3. Monolithic Ignorance

兆候は我々が無視することはできない終末宣言に依る
海洋は死に、我々のほとりで沸いている
川はそれを機に、総ての病的な毒素と流れる
飲み込むと、その凶悪な毒味を堪能できる

愚かにも私どもは、その奈落の底で支配者に従ってしまう
臨界質量にあたる人々の根回しは、我々を絶壁の端の限界まで追い込んだ

一枚岩の無知
知性を欠いた
権限委譲を含み込み
退化が進む

絶滅に至らしめるまでに成長し、人びとを感染した枯病
あらゆる生命をむさぼり癌の如く、病は広がり
地球は不毛の荒れ地に、大空を覆う亜硫酸の煙が黒い
死んだ惑星は、今、私たちの死の目前に終末を告げる

この領域を支配しようとした者は、たったそれだけに干渉した
彼らの緻密な計画の誤差は、我々の破滅をもたらした

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曲目は、

1. Arbiters of the Apocalypse  04:20  
2. Theatre of Horror  04:33  
3. Monolithic Ignorance  04:33
4. Crumbling Imperium  05:24
5. Communion  04:45
6. The Exaltation  03:40 
7. Profanum Vulgus  05:27
8. Copernican Heresy  03:44
9. Only the Spineless Survive  04:19  
10. Cleaving Giants of Ice  04:22  
11. Altar of Sacrifice (Slayer cover)  02:46   

Total  47:53  

♯3はyoutubeにリンクしてあります。

bandcamp
Great Is Our Sin