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Inverloch / Distance / Collapsed (2016)

オーストラリア産ドゥーム/デスメタルバンドによる1stフルアルバム。
Relapse Recordsからリリースされた。

89年から93年まで活動したフューネラルドゥームのオリジンの一つ、Disembowelmentに在籍していたPaul Mazziotta氏(Dr)とMatthew Skarajew氏(Ba)による新しいバンドが、このInverloch。
Disembowelmentの解散後のメンバーの動向並びにInverloch結成への経緯として、
93年からVo,GtのRenato Gallina氏とBaのMatthew Skarajew氏は、Disembowelmentの幻想性を思うTrial Of The Bowなるアンビエントプロジェクトで活動。
04年からBaのMatthew Skarajew氏とDrのPaul Mazziotta氏はグラインドコアバンドのPulgarにて活動。
そしてDrとBaにより10年からライブバンドとして結成された「d.USK」なるDisembowelmentの諸要素を持つライブバンドを母体に、メンバーの調整を経て名前を変え11年の後半Inverlochは結成された。
なおInverlochでMatthew Skarajew氏は、gtを担当している。現在のメンバーは以下の通りだ。

Paul Mazziotta  Drums 
Matthew Skarajew  Guitars 
Mark Cullen  Guitars 
Ben James  Vocals 
Chris Jordon  Bass 

更に本作では、Transcendence into the Peripheral の♯7にて
ダブルベースを奏でていたTony Mazziotta氏がゲストで参加している。 

12年のEP「Dusk | Subside」では、Trial of the Bow等での仄暗いアンビエント要素とimmolation等を彷彿とさせる聡明な暴虐のリフレインが高次元でフィードバック/融合されたドゥームデスメタルサウンドであったが、16年の2作目となる「Distance / Collapsed」 はよりDisembowelmentの正鵠に焦点を当てたようなドープな仕上がりだ。
14年から15年の間で録音されたサウンドに、そのままDisembowelmentへの郷愁を感じさせる。陰鬱な情景の裡になにか人を惹きつけるような妖しさも内在している。

デスメタリックで技巧的なリフ、デスメタリックなスケール感のトレモロによるリチュアルな攻撃性や、寂寞感を催すアルペジオ等、音を構成するもの一つ一つを掻い摘んでいくと、過去十数年分デスメタルの積み上げてきた歴史から遡及する現代的解釈がある。
これらはDismaGrave Miasma等の現行ドゥームデス勢への共振を感じさせるが、Disembowelmentを継承する孤高とも言うべき整合性のでたらめさ、異形さが酷く幻想的だ。

DuskBackyard Mortuary等のカルトなフォロワーバンドがDisembowelmentとの差異を自らの音像に作り出す為、おおよそ重厚な世界観を紡ぎだすリフのデスメタルの部分に様々な仕組みを組み込んできた訳だが、このバンドアンサンブルは、もっと死の連想性から来るような昏い幽玄さ、音楽に於けるフュネラルのイズムに重心を傾けてきている。
例えるのなら、EvokenやEsotericと同じフィールドにいながらに、デスメタルをやっているDisembowelmentと変わらない体裁がそこにはあり。フューネラルドゥームのオリジネイターから、元々バンドの素養に含まれていた仄暗いアンビエントのプロジェクト等を経過して、敬虔な暗黒叙情譚の深みに沈殿していくアトモスフィアが、Inverlochの外観を形成する諸因子になっている。

なお、アルバムは全5曲約40分間で徐々に陰性の深淵に歪み込むアンチクライマックスな仕上がりで、前身との比較としてトータルでのデスメタル要素の減退を覚える作風にしてコンセプチュアルな要素が多いが、その概観を紐解く鍵として、本作はデジパック盤のみのリリースで歌詞ブックレットの類は附属されていない為、また詩が闇の底から蠢くようなグロウルヴォイスで紡ぎだされている為、暗黙の裡に何を描いているのかは誰しもにも謎だ。
我々はただ茫然とこの妄信的ダークネスの幻影を慄然と味わうことになる。

元来80年代の終わりから90年代の初頭に於ける露悪的極限的な姿勢から英国のデカダンスとは違う精神性の重たい音楽。
内省的な部分にある幻想性への憧憬がフューネラルドゥームのサウンドを生み出したものであるのなら、初期Avantgarde Musicの作品群他から構成される黎明期を経過し、どの時代も変わる事の無い、昏く重い幽玄な抒情詩になった形式美がそこにはあり、本作もまたいつ何時この世に解き放たれてもおかしくは無い代物のように思える。
なぜ突如としてこの音が復刻されたのかなぞ難儀なことだ。

と言う訳で突如再始動し開陳されたDisembowelmentの、と言っても過言ではないInverlochによる本Distance / Collapsedは、20余年後のDisembowelmentのリリカルな別パターンとも言うべき陰々滅々たるカオスに魅了される、崇高なまでの完成度の高さを窺わせる傑作なのだった。

曲目は、
1. Distance Collapsed (In Rubble)  08:39   
2. From The Eventide Pool  06:34   
3. Lucid Delirium  06:14   
4. The Empyrean Torment  11:49   
5. Cataclysm of Lacuna  06:10   
 
Total  39:26   


♯2はyoutubeにリンクしてあります。

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