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Altarage / NIHL [2016]

スペインのブラック/デスメタル1stフル。
CDはチェコのドゥーム/デス/スラッシュメタルレーベルDoomentia Recordsからリリースされた。
デジタル配信とレコードはドイツのブラック/デスメタルレーベルIron Bonehead Productionsからリリースされた。
カセットはUSエクスペリメンタル/ドゥーム/ブラック/デスメタルレーベルSentient Ruin Laboratoriesからリリースされた。

このバンドの体は、正体不明である。
結成された日時も知れず、ただ15年にデモ16年に本作をリリースしている物的事実と覆面の4人組が映し出されたアーティスト写真だけ。
facebookを覗いてみても
好きなバンドDeath Metal
ジャンルDeath Metal
情報Death metal
と連絡先が記載されているのみだ。

ただ其処に連絡先が記載されているだけ、そのキャラクターが怪しげに映し出されてくるように思える。
ホーム画面にはインタヴュー記事の投稿をシェアしており、ミステリアスさを残しつつも真面にインタビューに答えている。

Altarageは供物を意味する。バンドに依れば我々は虚を追及する精神性をもって活動を行う理念の元、虚無への供物を体現しているようだ。
往々にして虚無を名指す音楽と言うのは遍く表現の昏い面に擦り寄り体験的でありエコーがかりリバーブがかった歪の洪水のよう。
このAltarageによる15年のデモを経てリリースされたこの1stフルアルバムも一切の光の届かない昏い世界に深く深く潜り、音楽にして邪悪で能動的なエクスペリメンタルの連続に残虐への郷愁を内包し乍ら現代的音楽思想の陰性へ残響の韻を当て擦り乍ら、此処の辺りで漸く我々に惨たらしく。

本作のタイトルであるNIHLはNoise-induced hearing lossの略で、これは騒音性難聴を差す。音を聴けば、それはまた仄かにシニカルな趣を留めていると言える。
また、その音は多くにブラッケンドデスメタルと認識されるが、彼らにとってはデスメタルであるようである。
何か新しい音を標榜する質のものであり、インタヴューに於いてもその影響源を明かしていない。
ただ、そこはスペインの心でやはり何かのパラレルワールド的存在を強く感じさせ、音像もそのPortal直系の深遠たる多義的な死の世界、空虚の世界、その一つの世界を妄信的に何処までも追及していく趣のものに感じられてしまう。
其の辺りで何か新しいムードを開拓するというのは大概で、昨今大概は聴き難いものになっている様に思えるが、彼らによる『NIHL』に起源した、虚無の幻視への最大の彫琢は、Portal以後の暴虐音楽として一つの好例と呼べる惨澹の陰影を界隈へ差し落として来ている。

ひと息にPortal以後、或いはその直系と言っても形は様々なものが在る。直系ではなく別軸でのTeitanbloodやRevenge界隈のデス/ブラックのひたすらに冒涜的なものだったり、Prosanctus InferiやIgnivomousその他みたいにUSカルトアンダーグラウンドのOrder from ChaosやAngelcorpseからの歴史を感じさせる物でもあったりしていて、この辺りのノイズに塗れる排他の歴史は長く一見同じような音だが実際は多様だ。
其処に対してAltarageの音像は、そのデス/ブラックの伝統的な仕組みの中に、半ば隠喩的に「無」なるジャケットでも印象的であったUSテキサスのBrown Jenkinsや、英国のGhastのようなアヴァン/ドゥームの様式を伴ったブラックメタルの排他的でやや重厚ながらに空虚な手法を組み込んできているのが印象に残る。
この暴虐ノイズデス/ブラックに空虚と言うシステムが重要で、そこに一つの好例足らしめる必然性とPortal界隈との共振、もとい惨澹の陰影を界隈へ差し落として来ていると言える。
くどいが例えばPortal直系のほとんどサイドプロジェクトと言えるImpetuous RitualのPortalとの差別化には、ブラックメタルのプレイパターンを基にした盲目的な暗黒への帰依が、密教性だったり幻想性を際立たせるある種の演出のようなエクスペリメンタルを目的としたサウンドが主に内包されていたものだが、其処に対してAltarageの音像は、ドラマも神秘性もひったくれもなく、バンドの方向性通り、ただ総てを無に帰すシニカルなアプローチを思わせるものが在る。
内実をあり体に言えば、極端に重苦しいトレモロと単音リフによる技巧的なギターワークとフルブラスティングなビート感に凄く遅くしたBlasphemyみたいなコード進行とハードコア感のあるミドルパートを絡める緩急と熱量を黒々しく保持するバッキングが、ニヒルなグロウルと全体に時折組み込まれるニヒルなアンビエンスとの対比をもってして畳みかけられるかの、激烈な歪みを用いた昏く排他的にして物理的かつ立体的なサウンド。その殺伐としたサウンドのまま終盤に差し掛かって行き、♯7からそのまま終曲の♯8に移行していく連曲の展開美等には、音楽としての美的な点があることに驚嘆の念すら憶える程、ある種狂的な代物であると。
結果として、このBrown Jenkins以降の虚無の精神とPortal以降の革新的排他サウンドを紡ぎ合わせてきたスペインの新鋭デスメタルAltarageによる1stは、排他的で素晴らし気な怪音楽を取り扱うことで定評のあるレーベルから意味深に細く広く流通され今年のアンダーグラウンドが少し沸いたのも頷ける作品に仕上がっており、この同じような音の連続に手をこまねくか、はたまた微細な緩急を伴った惨澹たるリフワークの連続に嵌まるか、翻って本筋である虚無の気配に魅了されるか、受け手の感じ方は、今まで聴いてきた音楽により異なってくるだろうが、そのだけ界隈の多様化と先鋭化が進んでいると言うことも裏付けられることであり、その刺激的で昏い感性の最新系がここに起源してきている。
近年エクストリームユーザーからの支持を集めるPortal、Prosanctus Inferi、Ghast等からの流れを汲み独自的に昇華してきたシーンの先進的な重要作であると断言したい。

曲目は、

1. Drevicet  04:57 
2. Womborous  03:50 
3. Graehence  05:15 
4. Baptism Nihl  03:10  
5. Vortex Pyramid  05:13  
6. Batherex  04:35 
7. Altars  04:32  
8. Cultus  04:32  

Total  36:04 

♯6はyoutubeにリンクしてあります