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2016年激重鋼鉄音楽私的傑作選

もとい年間ベストです。
今年リリースされたメタル作品の中でも傑出していた激重鋼鉄音盤を50枚程選出させていただきました。

バンド名/アルバム名
(国名/作数/レーベル/ジャンル)の体で、
ジャケットはyoutubeにリンクしてあります。DIES IRAEさんのように。
それでは、あしからず。

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1.Darkthrone / Arctic Thunder
(Norway/17th/Peaceville Records/ブラック)
ブラック・メタル回帰と期待されていた、近年ではかなり注目の最新作でしたが、デス~プリミティブ・ブラック以降のビヨンドな作風を追及する一作に。
独創性を意識し様々なジャンルの垣根を越えてくるサウンドが犇めく昨今で、OpethやAlcest等を聴いても思えましたが、彼らもまた自己内に内在する郷愁と共感を起す原始的で過敏な音への意識をより深く求めることによって、その当人にしかわからないシステムをより研ぎ澄ませて提示してきております。
それは難解かと言われればそうではなく、ノルウェイの郷愁へ沈んで行く様な、デス/ブラック/正統派/クラスト由来のダークの総体が凝縮された歪んだ音像が自然と身と心に沁み入るプレ・アトモスフェリックの際立つ名作でした。

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2.Spiritus Mortis / The Year Is One
(Finland/4th/Svart Records/ドゥーム)
目下Reverend Bizarre影響下のドゥームメタルとされるフィンランドのSpiritus Mortis。
Reverend Bizarreで朗々と歌っていたSami Hynninen氏参加後はよりその抽象性を具体的な音にしてきております。彼の参加後2作目となる本作の話ですが、オールドスクールなドライブ感をもつSpiritus Mortisのグルーヴは核に残しつつも、後半にかけて叙情的な作風になっていく中での楽曲の展開力やその表現の多様性が高いところに、Reverend Bizarre由来のエピックが現れており、Sami Hynninen氏の歌唱も伝統的なハイトーンヴォイスの響きを漂わせるようになったり、エピックドゥームよりの歌唱も聴かせるようになったりして最高だった作品がこちらに。#5『Holiday In The Cemetery』等のドゥーム史に残る名曲を残しつつ新たな方向性に向かっていくバンドの姿勢が善きです。

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3.Skaphe / Skaphe 2
(US/2nd/Fallen Empire Records/I, Voidhanger Records/ブラック)
紹介するだけ情報過多な現代ブラックメタルの結集的プロジェクトMartrodでの活動で知り合ったであろう。
Chaos Moonの中の人であり12年からKriegに迎えられているAlex Poole氏と、昨年忽然と現れ界隈をビビらせたアイスランドのMispyrmingに在籍するマルチプレイヤーD.G.氏によるブラック・メタル・デュオ、と言うだけで震えますが、音像の方も期待を裏切らないえげつなさ。
Mispyrmingのカオス渦巻く殺気の裡でKrieg由来的な排他的グルーヴが這い回ります。と言った御託云々よりもっとプラトニックな厭世観を感じさせる業の深い傑作。

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4.Blood Incantation / Starspawn
(US/1st/Dark Descent Records/アヴァンギャルド/デス)
90`sオブスキュア・プログレ・デスの様式を汲んだデス・メタルCentimaniのドラマーと、密教的かつ陰惨なサウンドのドゥーム・デス・メタルSpectral Voiceのメンバーから成るアヴァンギャルド・デスの1stフル。
Timeghoul直系のコズミックな要素を湛えた技巧的かつ独創的なデス・メタルであって、Stargazerの内省的な暗黒譚といった世界観やDemilichのリフ・ワークを彷彿とさせる中でも、近年のThe Chasmや14年のMorbus Chronみたいな繊細かつ大胆なドラマ性が際立つ名盤でした。
あまり関係ないですがMonarch!来日時Cofinsの出演でベースがSpectral Voiceのトレーナー着てMCしていたんですが、私の後ろにいたMonarch!のベースが、MCの流れとか何も関係なく「Spectral Voiceイイね~」って言っていて激アツだったんですが、その後この別プロジェクトが各ウェブジンで年間ベスト入りと言うことで、今の情報の影響力はある程度均一化されてしまっていて、今時代の最先鋭にあるデスメタルはこれだ!みたいなのは萎えますが、ただそれがこの音というのはなんとも懐が深く素敵な話ですね。

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5.Ehnahre / Douve
(US/4th/Kathexis/エクスぺリメンタル/アヴァンギャルド/ブラック/デス)
電子音楽界への漂流を続けるKayo Dotとは裏腹に、Kayo Dotの不穏らしきことを本格的にやり始めた、Kayo Dotの元メンバーが率いるエクスペリメンタルドゥーム/ドローンプロジェクトのEhnahreによる今年一の奇作。
作中に前々作のフリージャズ性や前作のドローン性を漂わせながらも、此処へ来て全く持って訳の分からない先鋭的な不協和デスメタルの素養や、異能さを引き立てる気狂い染みたヴォーカルワークや、暗鬱に微睡む鍵盤の美旋律に恍惚の表相を浮かべる、何処をとってもコンテンポラリーなアングラなヘビィメタルへの批評性が高い奇盤怪盤の類いが素晴らしく。

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6.Head Of The Demon / Sathanas Trismegistos
(Sweden/2nd/Invictus Productions/ブラック/ドゥーム)
00年代に活躍したNegative Plane、Cultes des Ghoules、Faustcoven以降のオカルト・ブラック・メタルの世界は、より幅広い界隈へ子葉を広げ発展を続けています。
初期オカルト・ブラック・メタルのトラディショナル・ドゥーム性は原始的なGothicとの共感覚を起こさせる。大よそHead Of The Demonの音についてですが、この概念は激しさやメロディの充実への反応とはまた別次元の心地へ人々を誘うことができます。
掘り下げてみやればNegative Planeやその界隈の音楽性には少なからずトレモロを主軸とした戦慄するリチュアルが内包されておりましたが、彼らの手法は暴虐性が皆無で、イタリアの初期Mortuary DrapeからドイツのDark MillenniumやBethlehemの3rd辺りにある緩急の緩の部分を抽出した、訝し気なアルペジオの使い方が巧いブラック/オカルト・ドゥームロックを聴かせてくれます。
この2ndでもそれは変わらず、界隈が発展していく中で極端に贅肉を削ぎ落としながらも、必ずその道に人々をそそらせる蜜を落としていくやり口が魔的で密教的であって足を踏み入れれば魅惑的な、気が付けば取り憑かれたように聴いていた名作でした。

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7.Trees of Eternity / Hour of the Nightingale
(International/1st/Svart Records/ゴシック/ドゥーム/アンビエント)
Swallow the Sun他のJuha Raivio氏(Gt) 、元Swallow the Sun他のKai Hahto氏(Dr)
October Tide、ex-Katatonia他のFredrik "North" Norrman氏(Gt) 、October Tide、ex-Katatonia他のMattias "Kryptan" Norrman氏(Ba)
Aleah Liane Stanbridge女史(Vo)(R.I.P. 2016)による北欧ゴシック・ドゥームの1stフルが伝説級の名作で、Norrman兄弟による壮大なグルーヴとKatatoniaのダークネス、Swallow the Sun由来の叙情美を内包しつつ、
Aleah Liane Stanbridge女史の歌唱により繊細で嫋々と導かれて行く、まなうら映る消え入りそうな情景が尊い一枚となっております。
Les DiscretsのFursy Teyssier氏を起用したアートワークを含めて総合的にみた、都会性の高い先進的な哀切の情念が、現代の共感覚へ没していくかのThe Third and the MortalのトラッドとShape of Despairの悲哀、October Tide、Officium Triste以降の翳りのトラディショナルを尊重する世界の中に、シューゲイズの繊細さを落とし込んできた新世代的なサウンドに、感嘆の息を漏らす凄すぎた一作。

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8.Virus / Memento Collider
(Norway/4th/Karisma Records/ロック)
Dodheimsgard/Ved Buens Ende/Cadaver/Ulver/Satyricon等にちょろちょろ参加してきたAura Noirの奇人Czral氏がGt,Voを務めるアヴァンギャルドロックバンドで、
Ved Buens Endeにあった難解な路線を踏襲し、最近のDodheimsgardやその界隈のドローン空間と同じ空気感で畳みかけられるアヴァンギャルドジャズロックは変わらず、
この訝しげな手法の数々を聴かせる、洗練されている伝統的な方法論を用いた選民意識を煽るような昏い異能サウンドは頗る良い侭に。

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9.Irkallian Oracle / Apollyon
(Sweden/2nd/Nuclear War Now! Productions/ブラック/デス)
バンド・アンサンブルにパーカッション風味を用いることによって、低音と中高音域のバランスが人間好みのものになり、更にリチュアルのリアリズムも強調されると言う。
パーカッションの音色がメロディとグルーヴの骨格を形成し、Grave Miasmaを筆頭とする密教性漂う音像の裡にPortalの模糊した暴虐リフが落とし込まれる異形のブラック/デス。
それはそれで味わい深くて良いことなんだけれども、密教的なことをやろうとしてただ先人を模しているだけのズブズブと暗闇の泥濘を這いずり回っている作品は少なくありませんが、此処に来てこの音像は、革新的であり、リチュアルな音像に対する聡明な理解も感じられるもの。
音像の中でベースがやや際立っているのも珍しく総合的に見てグルーヴ重視な作風がこの地獄みたいな界隈でキャッチーだった快作になります。

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10.Antaeus / Condemnation
(France/4th/Norma Evangelium Diaboli/ブラック)
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11.Terra Tenebrosa / The Reverses
(Sweden/3rd/Debemur Morti Productions/アヴァンギャルド/インダストリアル/ブラック)
不穏な音を鳴らすスウェディッシュポストハードコアバンドBreach解散後新たに結成されたアヴァンギャルド・ブラック・メタルにして、インダス時代のBlut aus Nordからの影響を感じさせる独自的な音楽性でブラックメタル人間からも話題の3人組。
新作はどうかと言われれば、より自己内在的世界を追求していく種類のものに感じられる代物に仕上がっております。
それはポストの世界からブラックメタルの世界にやってきて音の先鋭性が評価されている中で、根底がハードコアであるからかNeurosis系列の深遠的かつ不安定な情調が漂ってくるものになり
アンチ生命な死への欲動を導く不協和音のメロディ、淡々と繰り出されるも絢爛で破滅的なリズムパターンに、冥界からの呻き声といった、恐怖のエクスペリメンタルに戦慄するアヴァン/インダス/ブラックの様々なアプローチが能動的な姿勢を持ち構築されて行き、終盤の5分弱のドローン空間から17分間に渡り繰り広げられる奇天烈なアヴァンギャルド・インダストリアル・ブラック幻想譚まで概ね創造性の際立つ奇作でした。

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12.The Body / No One Deserves Happiness
(US/5th/Thrill Jockey Records/Daymare Recordings/エクスペリメンタルスラッジ)
激重音楽界隈の最先端を行くオレゴン州を拠点に置く人間放棄エクスペリメンタルスラッジデュオThe Bodyの最新フルアルバム
「最も粗悪なポップアルバム」なるものがコンセプトの本作は、女性ヴォーカルの表現の妙や、ヴァラエティ豊かな楽曲の一つ一つの主張によるユニークかつ猥雑な概観を作品の印象に落とし込みつつ、
ストーリーの裡に陰性の一貫した情調を保った、完成度や芸術性の高い代物として、
これまで培ってきた排他精神に代表される孤高の実験性、その行先に起源する極上の粗悪品に仕上がっております。

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13.Spektr / The Art To Disappear
(France/4th/Agonia Records/インダストリアル/ブラック)
インダス時代のBlut aus Nordや英国のThe Axis Of Perditionが気の触れたようなブラック・メタルのリフを聴かせる趣のマテリアルを創造していたのに対して、近年のSpektrは、暗黒ビートとはまた違った90‘s厭世インダストリアル何某からの流れを感じさせる、数種のリズム・パターンに能動的なリフを乗せ組み合わせていく手法が顕著になってきております。
今回は無意味なところへダークアンビエント要素を挿入し中々ダレさせることもなくアルバム全体で確と緩急の範疇に止めていて、刺激的なインストゥルメンタルの連続を繰り返していながらに一定のラインを超えず無機質であり、アンチ生命な異能さが音空間を侵食してまいります。終局の10分にも及ぶ#9でのトリップ・ホップ影響下のインダストリアル・ブラックは斬新極まりなく。
エクストリームな方面では、動性に躁状態を彷彿とさせる代物もあるものの彼らは際立って冷厳に様々な音色を落とし込んでおり、相変わらず音の引き出しが多いフレンチ界隈の中にいながらにも厳粛かつドープな雰囲気で一貫している今作は、この静動の対比の美学と、この取捨選択の妙に陶酔すら憶えるような引きの巧さが、頗る魅力的に思えます。

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14.Hyponic / 前行者
(China/3rd/Weird Truth Productions/フューネラルドゥーム)
中国は香港のツーマンフューネラルドゥームによる3作目。
Esotericフォロワーだった前2作からコンセプチュアルな要素を強めつつ、よりメロディアスな作風に一転した本作は、常套句ですが単なるフォロワーサウンドからの脱却を感じさせるものになっており、
音色や展開そのものが別次元の、大いなる神秘へと変遷してきています。
私はこの膨張と破滅とを繰り返していく強大なエクスペリメンタルに恍惚の念を禁じることのできないようです。

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15.Krypts / Remnants Of Expansion
(Finland/2nd/Dark Descent Records/デス/ドゥーム)
Dark Descent Records所属の冥界フィニッシュ・ドゥームデスKrypts。
レーベルメイトであるGorephiliaのオリジナルギタリストの加入後初となる通産2作目。
今回はドゥームデスの現代的リヴァイバルサウンドを基盤にしつつ、ドゥームデスの可能性を拡張していくかのごとく、シナプスの伝播していくような宇宙のミニマムを漂わせてきております。
同国のオリジネイターであるRippikouluの遺伝子を持ちつつ、それは茫漠たる暗黒空間を揺蕩うように展開されて行くフィニッシュドゥーム作品であり、アンダーグラウンドの世界ではワールドワイドな流れにあるIncantationリヴァイバル以降の音を見つめているバンドの気概が伺える力作です。

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16.Howls Of Ebb / Cursus Impasse: The Pendlomic Vows
(US/2nd/I, Voidhanger Records/ブラック/デス)
USサンフランシスコのブラックメタルと言うだけでお察しな排他的ブラックメタルをやっているバンドでして、
前作よりより緻密に畳みかけられる、Leviathanの2ndやKrieg等から垣間見ることのできる前衛ブラック/ノイズアプローチに、Morbus Chronのオールドホラー的マインドのあるデスメタル要素を落とし込んだかのような、冥界サウンドが琴線に触れました。

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17.Hail Spirit Noir / Mayhem in Blue
(France/3rd/Dark Essence Records/プログレッシヴ/アヴァンギャルド/ブラック)
無理やり体系付けると彼らはサイケデリックブラックメタルのジャンルの音を鳴らすバンドとして認知されていながらも、やはりGhost以降のヘヴィ・メタル界隈の流れを見たバンドと聴き手/メディアの相対関係に於いては、独創的な価値のあるものです。
ブラック・メタルに70年代のプログレッシブ・ロックと60年代から70年代のホラー映画の雰囲気を融合させ呈示してきていた前作前々作を踏襲しつつ、より躍動的なロックのフィーリング的世界に比重を傾けた本作は、的確なまでにキャッチーであり、また奇矯な作品として成功しているように思えます。
このあたりのバランス感覚を綻びなく表現できているエクストリーム界隈のバンドとしてはTriburationあたりとの共感を得る作品に仕上がっておりました。

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18.Fyrnask / Forn
(Germany/3rd/Ván Records/ブラック)
ドイツの一人アトモスフェリック/リチュアルブラック。
前作はもうちょい激情的な躍動感のある内容ですが、今回はそれに加えて静謐であり密教的であり茫漠たるジャーマンブラックの郷愁を思う好内容でございます。
Nagelfar~The Ruins of Beverastその後のShrine of Insanabilis等と共振する現代ジャーマンブラック界隈に於ける独特の世界観での、自然崇拝の黒魔術に魅せられていくかのアンビエントかつリチュアルな作品に仕上げてきており、派手な音作りではないですが、カスカディアンとはまた違う郷愁の中から溢れ出す盲目的なドラマに惹き付けられるような没入感の素晴らしい一枚でした。
この辺りの展開力と、その冷厳に導き出されるリチュアルたるやといったらないところ。ラストのヴァイオリンの音色なんかも、トータルでなにか良いもの聴いたな感を思い起こさせられたりしていて、なんだか単純で可笑しい話ですが、気に入っております。

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19.SubRosa / For This We Fought The Battle Of Ages
(US/4th/Profound Lore Records/Daymare Recordings/ポスト/ドゥーム)
女性ヴァイオリニスト2人と女性Vo在籍の厭世観の漂う気鬱なポスト・ドゥームとして、頽廃的な気配とヴォーカル/ヴァイオリンの卓越されたメロディラインほかで各メディアから賞賛を浴びた13年の前作からの注目作ですが、より濃厚なアトモスフィアを感じさせる作品になっております。
精神の糸が途切れてしまうような気配のメロディを重視していたかの前作から、月を凝視し何かを見たかの深遠的な作風になったともいえますが、バンドのオリジナリティは変わらないところの御堅い一作、その聴かせる姿勢は変わらずに高い評価を受けております。

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20.Zealotry / The Last Witness
(US/2nd/Lavadome Productions/アヴァンギャルド/デス)
Memento Moriからリリースされた1stから、まさかの新興レーベルLavadome Productionsへの移籍作となり、
入手に難儀しておったところAmputated Vein Recordsが入荷してくれていたカナダのアヴァンギャルドデス。 
冒頭から不協和音全開で畳み掛けられる本作は、Demilich直径のリフワークとベースとドラムによる立体的なリズムセクションが相変わらず最高過ぎ。今年はメンバーが掛け持ちするChthe'ilistやFirst Fragmentも物凄かったですがやはりP. Tougas 氏の核、本質としてはここに集約されているのが明白な音像で、この現行Demilich系アヴァンギャルドデスの中でも随一の表現力はもう少し高く評価されて然るべきものに思えます。

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21.Ulcerate / Shrines Of Paralysis
(New Zealand/5th/Relapse Records/アヴァンギャルド/テクニカルデス)
ニュージーランドのアヴァンギャルドテクニカルデスメタル。
Deathspell Omegaの台頭以降の世界から、不協和音の混沌渦巻くアトモスフィアの中でのブルータルなカオティックアートを邁進する彼等ですが、今作もまたその11年3rdからの方向性を踏襲しつつも、より混沌として煮詰められた音象を呈示しております。
テクニカルなデス/ブラック/ノイズ/カオティックコアのマージナルな空間に、語弊がありますがポストメタルの名盤だった2ndの要素(わかりやすい展開力)も顔を出したりしていて充実しておりました。
バンド=ジャンルの存在として唯一無二の様相を呈しつつも、世間に確かなフォロワーを産み落としてきている一つの殿堂の最新作。長期的な愛聴盤になっております。

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22.Mithras / On Strange Loops
(UK/4th/Galactic Records/Willowtip Records/エクスペリメンタル/エピックデス)
エピックデスメタルの開祖Mithras。そして今作は2016年のDominationと名づけたい一作。
彼らはエクストリームメタルの総体的なメタファーを内包したMorbid Angel のDomination以後の新世界で試行錯誤を繰り返しておりましたが、その試みを評価されることはあっても、正鵠を得るような作品に携わることはありませんでした。しかし今作に至っては広い水面下の世界で大きな反響を得ておるようです。
Drums, Guitars, Synths のLeon Macey氏は近年では復活したSarpanitum等にも参加しており、そこからのフィードバックとして繰り広げられるこの暗黒叙情譚の裡で、90年代に界隈へ穿たれたDominationの世界から、Sarpanitumの暴虐性や、Rings Of Saturn等のデスコア以降の宇宙性や、Blood Incantationの漠たる暗黒空間でのドラマ性を吸収しつつ、原初的な宇宙の星星のはためくような叙情美を獲得した、何か悟りの世界を感じさせる力作を提示してきております。
テクニカルよりもダイナミズムであり、暴虐性よりも能動的な力に魅せられる作風は胸の裡に新しい強い印象を残してくれます。

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23.Aluk Todolo / Voix
(France /5th/Norma Evangelium Diaboli/ブラック/クラウトロック)
荒涼感を主とした漠たるブラックメタルにクラウトロックの実験性を織り交ぜた音楽性のブラック/クラウトロックバンド。全体として、フュージョンや疾走系フリージャズの方法論を用いた前衛ブラックメタルによりトランス感覚を誘発させるスタイルの本作は、よりクラウトロックの実験性を主軸に据えて構築されるエクスペリメンタル濃度の濃厚なトリップ音源と成っていて、うちはこれを五畳一間の狭い部屋の中で延々聴ゐておりまひた。本当インストなだけ延々と。

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24.Chthe'ilist / Le Dernier Crepuscule
(Canada/1st/Profound Lore Records/アヴァンギャルドデス)
Beyond CreationのDrとDemilich系のテクニカルかつ病的なデスメタルバンドZealotryのGt/backingVo等により構成されるカナダ産デスメタルバンドの1stフル。
超絶技巧系テックデスメタルに比肩する技巧力と、グロウルのコーラスとハードコアライクなグルーヴが起伏に富んだダイナミズムを演出し、こちらも最先端のデスメタルを構築。
Demilich系の病的なデスメタルをテクニカル&ドラマティックといった現代流に再構築する点ではほぼZealotryと変わらないものの、各パートがひしめき合うような迸る主張によって楽曲の緩急のつけ方を主軸に起伏の極限に迫る高い展開力構築力を打ち立てた技巧力と模糊として暗澹たる雰囲気で覆われた現代流の芸術性との調和を高い次元で保った作品に仕上げているようです。

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25.Gevurah / Hallelujah!
(Canada /1st/Profound Lore Records/ブラック)
カナダモントリオールケベックのブラック。
04年のDeathspell Omega直径の密教的なコンセプチャルアートを感じさせる作風で、
妄信的なまでに畳み掛けられるトレモロと不穏さを際立たせるコード進行による超展開の数々たるや、
かの名盤たちに肉薄するほどの凄みを感じさせた一作です。Ascensionなんかはジャーマンブラックの様式を汲んだ音楽としての幻想性も感じさせるものですが、
こちらは妄信の果てに神を幻視しているかの戦慄のカルトリチュアルが心象を涜してくれます。

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26.Suspiral / Delve into the Mysteries of Transcendence
(Spain/1st/I, Voidhanger Records/ブラック/デス)
プリミティブな暴虐性からドス黒い瘴気を噴出する激烈なブラックメタルサウンドを土台に、
不協和音や幻想的なスケール感からの緩急の効いた空間アプローチも垣間見せるヒップスター指数の高いこの作品がまた出色の出来で、
暴動性と空間的な静的手法の対比の構築美による、純然たるカオスに終日魅せられておりました。
Impetuous Ritualと同じように暗黒への盲目的な帰依が結実/放散していく感覚もあり素敵ですな。

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27.Auroch / Mute Books
(Canada/3rd/Profound Lore Records/ブラック/デス)
Portal系の冥界的混沌グルーヴを主としたデスメタルを鳴らすカナダのMitochondrionに在籍するShawn Hache氏(Gt,Vo)とSebastian Montesi氏(Ba,Vo)等による別バンドがこちら。
このバンドでは両者の配置がクロスチェンジされていて、Shawn Hache氏が(Ba,Vo)でSebastian Montesi氏が(Gt,Vo)という編成になっています。
意味はないですが、もとよりMitochondrionでのプレイから触発された部分を互いに感じさせ合っているような性格のバンドで、前作までは、核をデスメタルとする部分では異界のものですが近年のKralliceにも類するような、テクニカルなデスメタルの動性にブラックメタルのトレモロを主とした排他的な音感覚を紡ぎ合わせたサウンドでしたが、Profound Lore Records移籍後2作目となる本作では、ObscuraだったGorgutsの世界観を髣髴させる、特異なリフレインと跳ねるようなグルーヴを緻密な形で心の閉所に押し込んでいき新しい思想を搾り出して行く作風への接近を思わせます。
概ね30分間先鋭的な異能リフと不穏で密教的な静的パートの掛け合いですが、聴かせない音で聴かせるサウンドを鳴らすMitochondrionの血が流れているだけ、練られたリフ構築と卓越されたリズムセクションによる混沌とした暴虐空間の裡に、随所に挿入して行かんとすギターソロや恐ろしげなグロウルの掛け合い等が目白押しで、取り分け難解な作品として洗練されたバンドアンサンブルを内包した一作に仕上がっておるようです。

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28.Jesu & Sun Kil Moon / Jesu/Sun Kil Moon
(US/コラボレーション/Caldo Verde Records/ポスト/エクスぺリメンタル/フォーク)
Godflesh復活後このプロジェクトの名を久しく聴いておりませんでしたが、
静謐なスローコアの第一人者Red House Painters のフロントマンMark Kozelek氏の別名義であるインディーフォークプロジェクトSun Kil Moonとのコラボレーションにて
再び最高の形でその名前を感じることが出来たように思える良コラボ作です。
神聖なる轟音/ひずみのアンビエンスとSun Kil Moonの言葉を主軸に、朴訥とした語りからメロウな部分ではより情感的になって行く歌唱や、
緩やかに流れ行く郷愁を煽る情景が愛おしい一枚と成っております。

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29.Cobalt / Slow Forever
(US/4th/Profound Lore Records/ポスト/ブラック)
元々音楽性としてNeurosisみたいなことをブラックメタルの世界でやっていたバンドで、2枚組の大作として発表されたこの作品もそのアトモスフィアを受け継いで入るのですが、
インストゥルメンタル面では、いなたいクラスト風味を効かせたリフワークが支配的になってなり、悠然として展開されて行きます。
これには東京の暮らしに慣れてきた当時の私に長閑過ぎて、最初のころ余り良さが解らなかったのですが、
聴いていくにつれて、時間に詰められているからこそ時間を忘れさせてくれる音楽の良さを再認識させられ、結果長いこと聴いていた作品になります。
再結成時のAmebixみたいな作風を2枚組で徐々に追い詰めていく陶酔や貫禄すら感じさせる本作は、やはりメディアの方でも推されているようで。名盤なのですよ。
また本作から新たにex-Lord MantisのVo、Charlie Fell氏が加入していて、彼の声帯が引き千切れるような獣染みた咆哮は健在で何よりです。

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30.Neurosis / Fires Within Fires
(US/11th/Neurot Recordings/Daymare Recordings/ポスト)
今作は音像に01年7thであるA Sun That Never Setsあたりにあった王者の威厳が回帰してきた充実作、
情景に自己内在的な土着性の探求する様を携えた侘しくも雄大なスラッジネスに独創的なサンプリングを掛け合わせる安定した作風に思わず頬が嬉しくこみ上げるものです。
Scott Kelly氏とSteve Von Till氏の歌唱も哀切から憂愁を携えたような渋みのあるもので、積み重ねられ行く悠久たるポストメタルの幻想性にリアリスティックな陰影を落とし込んでいます。
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31.Lord Vicar / Waves Of Flesh
(Finland/3rd/The Church Within Records/ポスト/ドゥーム)
世界的には未だレアケースのWarning以降の幽玄で情緒的なエピックドゥームへの評価が高く、一般層にはヴィンテージ系のサウンドがややポピュラーなところで、Reverend BizarreのGt(Peter Vicar氏)とCount Ravenの初代Voにしてその後Saint Vitusでも歌っていた(Christian Linderson氏)を中心に07年に結成されているこのドゥームメタルの3作目は、全1曲約41分という、モロにBlack SabbathやSaint Vitusへ傾倒していた前2作に対してReverend Bizarreの大作志向を忽然と引っ張り出してきて展開され行くものであり、14年に亡くなられているUSドゥームレジェンドThe Gates of SlumberのJason McCash氏に捧げられた作品。
ブルージーに引き締まった冒頭から、時にWitchfinder Generalの歌心を匂わせつつ、徐々に伝統的なドゥームメタルの陰に没して行く作風で、悠久の陰の世界を描いて行く吟遊の様式的概念に、音楽への愛情伝播する作品でした。

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32.Void Meditation Cult / Utter The Tongue Of The Dead
(US/1st/Hells Headbangers Records/ブラック/デス)
ボイドメディテーションカルトという今生最高のなまえを与えられたパラノイア、Void Meditation Cult。
サウンドはBeherit系のスオミカルトノイズサウンドで瘴気の具体化という点で幻想的なカルトリチュアルの暴虐が内包されているものなのですが、DemoncyやNocturnal Vomitなどの同系バンドと比べると抒情性は皆無で仄暗い厭世癖を横溢するひずみの中で感じる殊更に密教的な代物に仕上がっていた濃厚ウォーブラック作品でした。

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33.Funeral Moth / transience
(Japan/2nd/Weird Truth Productions/フューネラルドゥーム)
ここ日本に於けるフューネラルドゥ―ムの総本山Weird Truth Productionsの設立者、Makoto Fujishima氏率いるFuneral Moth。
Worship系の鬱屈としたフューネラルドゥームと共振しながらも、お国柄のマインドを巧く醸し出すアトモスフェリックな作風が心地よく、音の水面に寂寞感寂寥感を映し出しながらも、あくまでも自然的な雰囲気が絶妙に死にたくならない深遠な情調が素敵でした。
バンド名の蝶一つとっても日本的なデカダンスを感じさせてくれていて、これも好きなバンドだけ心に残る一枚と成っております。

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34.Oranssi Pazuzu / Varahtelija
(US/4th/Svart Records/ブラック/クラウトロック)
サイケデリックブラックメタルを体現するバンドでしたが、
本作の音像はDarkspaceにブラッケンドクラウトロックと形容させるほど、空間的実験的体験的なものと成っております。
ソニックブーム的な疾走感と斜に構えた拍子がDeathspell Omegaとはまた違う、そのクラウトロック由来なサイケデリックに侵食されて行く前衛的な空間演出が好きですし、
多彩なヴォーカルワークの中でも、時折ナクトミスティアムみたいな悲愴感を感じさせる狂おしさがもっと好きです。

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35.True Widow / Avvolgere
(US/4th/Relapse Records/ストーンゲイズ)
USテキサスのストーンゲイズを標榜する男女3人組が発表した4作目。
いわばストーナーロックにシューゲイザーの幻想性を融合させたサウンドに、男性の酩酊する朗らかな歌唱と女性のたおやかで幻想的な歌唱のデュエットがゆらゆらと合わさるもので、時にインディーロックからサイケトラッドの要素を巻き込みつつ淡々と紡ぎだされる幽玄な楽曲たちを収録した本作は、Neurotが啓示されているドリーミングドゥーム界隈との共感を得ながらも、11年のBorisレコ初北米ツアーに出演した経歴やKURT VILE氏との交友関係、過去EndからRelapseに移籍してきた独自的な世界観から導き出されているような潜在意識の深い部分を揺らす代物として堂に入っている、00年代中盤のBorisがお好きであればぜひともなふわふわとする愛聴盤でした。

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36.Departe / Failure, Subside
(Australia/1st/Season of Mist/ポストブラック/デス)
Season of MistのDeathspell Omega枠から登場した新鋭ポスト・ブラック/デスメタルバンドであり、
レーベルメイトのDodecahedronと共振するUlcerate的なアヴァンギャルド・デス・メタルを鳴らしている彼らですが、飽和してきたアヴァンギャルド・デスの様式の裡に、Katatoniaみたいなクリーンの展開を織り込ませる手法がキャッチーだった一作。界隈が排他的手法によって新概念を生み出し歴史の黎明的役割を担った後に、こういった大衆化を図る衆が出てくるのは良いことで、新たに歴史を獲得したと思わせるDsO台頭以降のデス・メタル界隈と、幽玄で叙情的な雰囲気重視の作風の中でも、初期Kayo Dot系の激情やNero Di Marteを彷彿とさせる躍動感などのフックも効いており、客観視すればスロウネスやや効き過ぎですが私的には嵌まりました。

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37.Deftones / Gore
(US/8th/Warner Bros/ニュー/オルタナィブ/ポスト)
4作目の路線から直ぐに軌道修正し、今まで元のオルタナティブメタルの異端を今まで演じ続けていた彼ら、
近年Isisメンバーとの交流を経てPALMS結成に至り、その前にリリースされた恋の予感どちらにもその音響系の手法は垣間見え、また同時期にやっていたCrossesというチノモレノ氏の別プロジェクトにもオルタナティブメタルの亜流とも言える本質の多様性が伺えるものでしたが、
愈々ポストIsisという言葉が流行っていた時代を遠い過去にする程、Isisの血脈を汲んだ高いポストメタルへの批評性及びその濃厚なアプローチがこの本筋に現れたようです。
オルタナティブメタルで常に先進的な姿勢を持ってして自己の音像を再構築し続けて来た彼らによる、今尚時代の先端を行くこの最新作、
やはりずっと好きなバンド/人物の最新作ということもあり、長期的な愛聴盤になっております。

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38.Kvelertak / Nattesferd
(Norway /3rd/Roadrunner Records/ブラッケンロール/パンク)
業界に好かれるブラッケンロールバンド。ハイエナジーなサウンドは古今東西で人気のメタファーに覆われていて彼らのまばゆいスター性がそのまま駆け抜けていった3作目。今回はバンドが積み重ねてきたブラッケンロールの様式美にハードポップ系のイナフズナフ臭がするポピュラリティを加えたサウンドですが、ポピュラリティを意識しつつも、異形のまぐわいあう奇譚な存在感も維持しているのがなによりだった作品でした。ネットやら紙媒体問わずにずっと支持の声が出ているんだから国内盤も出せば良かったのに。

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39.Ritual Chamber / Obscurations (To Feast on the Seraphim)
(US/1st/Profound Lore Records/デス/フューネラル)
昨今のブルータルデスメタルの礎を築いた、IncantationやImprecationと並ぶ時代の衆の一つであるInfesterでドラムを叩き、
過去のEvokenでキーボードを鳴らしていたNuminas氏による暗黒夢幻室内楽プロジェクトの1stが本作。
AtaraxyやNocturnal VomitやHalberdよりも内省的でGrave MiasmaやNecros Christosよりも業の深い、自己内的な暗黒世界へ深く深く沈殿して行き、聴き手へ吐瀉を撒き散らし続ける、
後続共を黙らせる凄惨な説得力を持った鬱屈として哲学的なデスメタルの、一切の光の届かない冥獄界の惨澹たる情景が眼裏へ広がり行くかの如きは、
敢えて全く合わない音の連なりを用いて音楽性と呼べるものから遠く離れていくような所一つとっても、デスメタルの暗黒性を拡張してきた才人の懐の深さを感じさせますし、
そういう否定的な手法を用いていながらにして、暗鬱な飢餓困憊悪疫のサウンドスケープを巧く導き出しているようなところに陰性への批評性の高さも窺える、
その世界へ時折差し込まれる虚ろ気で幻想的なキーボードにも対比の美学を感じさせる、要所要素にぶち込まれる病的な音階でのギターソロといった聴かせ所も心得ており、
総ての音に意味があるといった、Numinas氏の独創性が際立つ快作になっております。

2001
40.Vanhelgd / Temple Of Phobos
(Sweden/4th/Pulverised Records/デス)
スウェディッシュデスのAsphyxフォロワー的な重く沈み込むデスメタルを鳴らすVanhelgdの最新作は、前作のデンマークのCerekloth辺りと共通していた密教的でいて凛とした叙情性のある遅いデスメタルサウンドから、よりオールドスクールなドゥームデスを髣髴とさせるほの暗く侘しい音世界を醸し出す作品になっております。
ただその侘しい世界には現代的な手法の数々が落とし込まれていて、スローなパートからブラストで畳み掛けられる暴虐的な展開力や心の半紙に描き出される鈍く淀んだ雰囲気漂う河川敷に首を擡げて佇む待ち人の荒んだ眼の認識下にあるような暗鬱たる心象風景のなかに、スウェディッシュデスの伝統を汲んだ琴線に触れる独創的メロディの斜陽を照らしださせるスタイルはHooded Menace辺りの近年評価の高い音象に比肩する名作でした。

2004
41.Deathspell Omega / The Synarchy of Molten Bones
(France/6th/Norma Evangelium Diaboli/ブラック)
常にシーンに深い啓示を与えるブラックメタルエリートDeathspell Omegaの最新作は、良くも悪くもらしかならぬ、気負いのないジャムセッションの如き能動的な展開の連続が約30分にわたり続いていく作品ですが、私的には前フル作のカオティックなフュージョン路線と、前EPの暗鬱な構築美を継承しつつも、ノイジャンのハードコア性に帰結していくような原初的な雰囲気がたまらない一作で、(毎作ブラックメタルの最新型を更新してきたバンドなのに今回は)ややカオティックコアにしか聴こえない因子を内包しながらも、変則リズムの中で技巧的に繰り返されるリフレインや混沌とした何層ものボーカルワークを主として確りとしたバンドアンサンブルを感じさせる代物となっていて、主観で恐縮ですが、やはりバンドの音の美学が凝縮された楽曲たちにまた耳を傾けていられるという時間が何より幸せでした。

2005 - Unraveled
42.Bloodiest / Bloodiest
(US/2nd/Relapse Records/ポスト/スラッジ)
Neurosis直系のポストメタルバンドなのですが、これに関して言えば例えばNeurosisがToolに蝕まれて行くような概観が心象に残っていて、民俗的グルーヴによるトライバルアートをドラスティックに転換して、ダークな情景を映し出す都会的で高い芸術性を誇る音像を鳴らしているバンドがBloodiestなのであるように思います。
そのBloodiest足らしめる抒情詩に暫く支配されておりました。

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43.Ruinous / Graves of Ceaseless Death
(US/1st/Dark Descent Records/デス)
ex-Disma, ex-FunebrarumほかのShawn Eldridge氏(Dr)
ex-Incantation,ex-Goreaphobia, ex-Funebrarumほか最近Immolationに迎えられたAlex Bouks氏(Gt)
ex-FunebrarumほかのMatt Medeiros氏(Vo,Gt)による-Incantation系列の暗澹たる暴虐性にパンキッシュな躍動感も感じさせるNewバンドの1stフルが期待を裏切らない作品で、Funebrarumの暗澹とした心象世界に多彩でソリッドなビート感をぶち込んでくるハードコアサウンドがしこたま面白い快作のようです。

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44.Inter Arma / Paradise Gallows
(US/3rd/Relapse Records/ポスト/ブラッケンドデス)
今年DeafheavenとCarcassとのツアーに帯同している、フォークロアなサウンドでブラッケンドスラッジの芸術志向を邁進するInter Armaの3作目です。
1stはNeurosisチックなポストスラッジサウンドでしたが、Relapse移籍後はブラックメタルの暗黒性が如実に現れているところのバンドで、今回はじわじわと畳み掛けられる激重暗黒音空間は変わらず、シューゲイズに唾を吐くかの敬虔で悠然たるフォーク/トラッドの素養も変わらず、停滞した空間をぶち壊すようにAlkadeelみたいにどこどことブラストを絡めてくるのも変わらず、発狂するかの終末思想と自然愛やアンチニヒリズムも変わらず、何も変わらない孤高の音楽思想に愛があり、今回はそれが更に煮詰まっていて最高でした。

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45.Unru / Als Tier Ist Der Mensch Nichts
(Germany/1st/Supreme Chaos Records/ブラック/クラスト)
メイドインジャーマニーの新鋭ブラック/クラストコアバンドUnru。
Eyehategodに代表されるシックネスな形而上的センス影響下のクラストブラックメタルはジャーマンブラックのほの暗いエピックもたぶんに含まれており、この動性とエピックの同居に暗い鈍い燐光をまなうらに幻視したりするなにやらするめだった一作です。
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46.Convulse / Cycle Of Revenge
(Finland/4th/Svart Records/デス?)
独特のデスメタルを進むフィンランドデスの重要ファクターConvulse の復活後2作目。
Svartのレーベルカラーに合わせたような東洋的なメロディーを付加したオカルトドゥームライクなデスメタル作品で、初期に在った病的な要素は既に消磨しながらも、静的な澄んだ音色やダイナミックなリフワーク等に代表される起伏に富んだ楽曲の展開美や微細な緩急のつけ方には、今なお音楽愛の深奥を進む気概が窺え、相変わらず音像のふり幅が大きいバンドの深淵なる世界を覗かせる、奇っ怪な音楽性に脱帽しっぱなしだった一枚。
とんでもないグロウルだけは初期から一貫していて、この全体のデスメタルのデスメタル足らしめるデスメタル性の引きの巧さがまた胆でしょう。

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47.Seven Sisters Of Sleep / Ezekiel's Hags
(US/3rd/Relapse Records/ドゥーム/ブラック)
Eyehategodの憎悪を増幅させるSeven Sisters Of Sleep、
ハードコアライクな衝撃に孕むスラッジドゥーム由来のダイナミズムには
初期のLord MantisやInter Arma系列のブラッケンドスラッジの聴き心地もあり。
アルバム全体に於けるアーティスティックな憎悪の撒き散らしっぷりがやはり気持ち良く素敵でした。

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48.Nox Formulae / The Hidden Paths to Black Ecstacy
(Greece/1st/Dark Descent Records/ブラック)
ギリシャのボーカル3人を擁するリチュアルブラックメタルのデビュー作。
ヴォイドハンガー臭がもんのすごい黴臭いアトモスフィアの漂うブラックで、Dark Descent Recordsに匂わせた理由がよくわからないくらいオブスキュアな仕上がりなんですが、同国のSADあたりのプリミティブさを現代的に昇華したような音感を軸にMoonblood的な寂寞感のあるエピック要素や初期Dodheimsgardのカルト要素などを内包した楽曲を収録のオールドスクールな良さのある一作でございました。

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49.Altered Dead / Altered Dead
(Canada/1st/Cavernous Records/デス)
Weird Truth Productionsが卸していたのでジャケ買いをした。今時珍しい直球な技巧的なリフを主体に聴かせるIncantation影響下の原始的なデスメタルサウンドを展開する新鋭。原始的な残虐性とコアな雰囲気が堪らない一作で暴虐の統一感‎に陶酔を覚えます。

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50.The Fog / Perpetual Blackness
(Germany/1st/Memento Mori/デス/ドゥーム)
Hellhammer直系のダウナーなハードコア感覚、吐き出される嗄れたグロウルヴォイスに、GoatlordやWinter等の伝説的ドゥームデスのフィーリングに富んだ演奏力を持つバッキングからなる激渋ドゥームデスThe Fog。この1stがとんでもないくらい渋くて、決して他所行きの顔じゃあないんだけれどもドゥームデスの批評性の高さが実現させた好悪スピリッツの神髄が起源している次第で、爛れた頽廃思想漂う空間の裡で質実にドゥームデスを演じながらも終盤で聴けるプログレ的なリフワークや、作中全体に漂うハードコアな感性に酔いしれる驚異的音像がここに・・・

以上となります。
ご閲覧頂きありがとうございました。

それではまた。