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東京を拠点に活動する、
HM-2ほぼフルテン系スウェディッシュ・デスメタル・バンド、Frostvoreのインタビュー。

2012年に、Frostbite という2ピース・バンドとしてスタート。2013年に『Scavenger of Human Dignity』EPをリリースし、2014年末に初めてのライヴを行なった後に活動を休止。その後2020年にFrostvore へと改名、再始動した。バンド自身が「人知れず改名」と語るほど日本での知名度は低いながらも、その音楽性が評価され、ドイツのTestimony Records と契約。2020年8月に1stフル・アルバム『Drowned by Blood 』 邦題『溺れて死ぬ』をリリースする。今回、Dr のShigenori 氏とのコンタクトが叶い、彼らの活動や新作に込められたデスメタル観について、長文のDM でお伺いした。

Frostvore ラインナップ
Koki (Bass, Vocals)
Satoshi (Guitars)
Taro (Guitars)
Shigenori (Drums)

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Q:Frostvore のみなさま、1stフル『Drowned by Blood』のリリースおめでとうございます!新曲の「Blackfield」や「Extreme Cold Torture」を聴いて驚きました。Raw&メロウなスウェディッシュ・デスを土台に、技巧的なトレモロ・リフだったり、情感的なツイン・リードが満載でとても魅力的に聴こえます。しかし、東京で普通に生活するだけでは、このような音は生まれませんよね。Frostvore はどのような影響を受け、今作のサウンドを確立することになったのでしょうか?

A (Satoshi):共通してスウェデスが好きなのはもちろんのこと、メンバーの中でも好みが分かれています。
In Flames、後期Dismember 系のメロディック・デスメタル系が好きな人もいれば、Autopsy、Bolt Thrower 系のハードコア系デスメタルが好きな人もいますね。今回はこの2つのいいとこ取りをして、曲を作っていけたと思います。

Q:『Drowned by Blood』は、どのようなテーマで制作をしましたか?

A (Satoshi):もともとアルバム全体の「これ」というテーマやコンセプトはなく、その時その時で思い浮かんだリフなどを録音したりと、超スローペースで曲作りをしていました。ですので、このアルバム自体が出来上がるまでに、5年ぐらいかかってます。『Drowned by Blood』というアルバム名が出てきたのは終盤の方で、ジャケットを構想していた時のことですね。

Q:作曲はどのように行いましたか?ミキシングとマスタリングはバンド自身でしていると聞きました。

A (Shigenori):Satoshi と自分が作曲し、Satoshi の自宅でマスタリングしてます。Satoshi が大半の曲を作っていますよ。
A (Satoshi):個人的には、Kurt Ballou のSunlight Studio発HM-2サウンド・オマージュ的なミキシングが一番好きで(特にBlack Breath)、そのHM-2の良さを残しつつも、ピッキングの細かいニュアンスは殺さない様に作りました。
Boss のHM-2はもちろんのこと、Lone Wolf のLeft Hand Wrath (HM-2クローン・エフェクター)も使用し、HM-2の2台繋ぎでレコーディングしました。




Q:『○○by Blood』というと、Exodus『Bonded by Blood』等を彷彿させますが、その辺りはそういったメタルフェチを狙ってのことでしょうか?

A (Shigenori):まさにその通りです!曲のタイトルは、Exodus、Messiah、Sleep と引用が多いです。
古いメタル愛を前面に出した方が、説得力がありそうだと感じたので、あえてモロな感じにしました。
もともと「Nihilistの『Drowned』デモをオマージュして、犬神家のスケキヨ君をジャケにしたい」というのがスタートでした(ボツになりましたが笑)。

Q:ドイツのTestimony Records からのリリースとなりますが、どのような経緯で契約を交わしたのでしょうか?
OSDM の非常にアツいレーベルだと思います。関係は良好ですか?

A (Shigenori):ダメもとでレーベルにメールを送っていたら返信してくれたのが、Testimony Records でした。無名で実績の無い自分たちの作品を出してくれる優しい(変わった)方だと思っています(笑)。Testimony Records からアルバムを出しているThe Dead Goats が好きだったので、契約できたときはかなり嬉しかったですよ。
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Testimony Records Official


Q:『Drowned by Blood』はアートワークも魅力的です。水流の感じがモロにDan Seagrave だったり、ジェイソンが佇んでいたりしていて最高です。Kenro Imamura (ぷにやかたわちこまる氏、肉田肉男氏と同一人物という説がある)という方が描いているそうですね。この作品のアーティストとして彼を選んだ理由はどのようなものになりますでしょうか?作品制作にあたって、なにかモチーフ等は伝えましたか?

A (Shigenori):今村氏のドラゴンの絵がめっちゃオールドスクールで魅力的だったのでお願いしました。コンセプトとして【悪霊に取り憑かれた男が自我を失いながら殺戮を繰り返し死体の山を築く】を伝えました。
アートワークだけ公開した際に「Promising!」というコメントが来て、すごい!となりました。
今村さんありがとうございました。

Q:バンドの初期の歴史について少し教えていただけますか。初期のFrostbite は、2人組だったようですが、法政大学のサークル内でのバンドだったのでしょうか。2012年~2013年のスウェディッシュ・デスのリバイバルというと、Black Breath やNails 等をリアルタイムで聴いていたぐらいの「早さ」だと思います。最初から明確に「HM-2でやろう」という意識があったのですか?

A (Satoshi):成り立ちはその通りです。ジャンルはともあれ、とにかくHM-2を使ったバンドをやりたい、という気持ちから始まりました。ちなみに私のHM-2との出会いは、Bloodaxe Festival で来日したBlack Breath です。そこからDismember 等のOSDM に墜ちて行きました。
オランダのNeurotic Deathfest に見に行ったらたまたまShigenori と出会い、同年代で音楽性が凄い合うと思い、その後バンドに誘いました。

Q:Frostvore は現在4人組のようですが、どのような経緯でそのラインナップとなったのでしょうか?また、改名の理由はありますか?

A (Shigenori):もともとはギタボでメロブラ寄りのギャーギャー声で歌っていたのですが、Entombed やDismember みたいな太い声の方がそれっぽいという話になり(笑)、サークルの後輩で太くていい声だったKoki を誘いました。そのとき彼は、Asphyx をコピーしていましたね!渋い!
改名については、レーベル側から検索で被るから名前変えた方がいいよと言われたので、いくつか候補を挙げてレーベルに選んでもらいました。確かに検索しやすくなりました。すごい!

Q:Twitter を拝見する限りでは、年齢や趣味も異なるように見えるのですが、どういったメンバー構成なのでしょうか?※「大寒波」の遊戯王カードは笑いましたが、遊戯王世代ですか。

A (Shigenori):ヴォーカルのKoki が20前半(大学生!)でそれ以外はアラサーです。趣味は各自色々ですが、みんなメタルは好きだと思います。
ちなみにアルバムのコンセプト【悪霊に取り憑かれた男が自我を失いながら殺戮を繰り返し死体の山を築く】のモデルは、遊戯王のゴギガ・ガガギゴです。
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Q:2014~2020年までに長い期間が空いていたように思いますが、その間は音楽活動等はしていましたか?
また、Frostvore を全くの別バンドとしてスタートさせる可能性はありましたか?

A (Shigenori):ギターのTaroさんはmoonrace というエレクトロ・ドゥームのソロ・プロジェクトをやっています。
A (Satoshi):これまでにあった質問の通り、曲を全部作り終わるのに5年かかりました。みんな新社会人となり忙しかったので、あんまり音楽活動に時間は割けなかったです(ディグりは欠かしませんでしたが)。

Q:Frostvore のOSDM 観についてお聞きしたいです。Frostvore が重視している要素は、どのようなものでしょうか? 現行のOSDM は、Death(死)はもちろん、Rotten(腐敗)、Darkness(闇)、Horror(恐怖)、Cosmic(宇宙)等をモチーフとしたバンドが多いですよね。

A (Shigenori):特にありませんが、ポジティブかネガティブかでいうとネガティブ寄りにしています。

Q:Frostvore のサウンドを好む方にお勧めしたい名盤を教えてください。

A (Shigenori):Entombed『Left Hand Path』(原点にして頂点)
Black Breath『Sentenced to Life』(クロスオーバー!)
 Horrendous『The Chills』(スウェデスリバイバルの雄、メロい)

Q:現行バンドについては、フォローしていますか?むしろ新世代OSDMと呼ばれるバンドのほうが、リアルタイムの音楽体験としての思い入れがあったりしますか?
また、最近のデスメタルの状況について言えることはありますか?

A (Shigenori):最近のデスメタルは大好きです!ディグの数だけ成果がでてくるので楽しいですね。
スウェデス系だとThe Dead GoatsLIKContaminated。HM-2 Sludge だとFange。モッシュできるデスメタルだと、Total Isolation と、Torso。激烈系だとCavurn が最高で、それぞれ特化してて面白いなと思ってます。

日本だとMortal Incarnation は崇高かつ邪悪な感じがしてめちゃ天才だなと思います。
2020年リリースで一番ビビッときたのはSaccular です。地獄サウンドと音ズレ具合が最高です。
最近のデスメタルの魅力の一つで、「お前忘れてるかも知れないけど、あのバンドってかっこいいんだぜ」と教えてくれるところがあると思いますね。最近だとUndeath が、Cannibal Corpse の魅力を語りかけてくれました。
※バンド名は bandcamp へリンクしています




Q:Frostvore には、デスメタル・ファンから見て、意外な影響源などは存在しますか?

A (Satoshi):今回の作品ではピュアなサウンドを心掛けていましたが、私はBullet for My Valentine やTrivium 等のメタルコアからメタルに入った世代ですので、次回作では飛び弦リフやウワモノ・メロディを多用してみたいと考えています。OSDM 警察に怒られますね。

Q:今後の予定についてはいかがでしょうか?

A (Shigenori):CDとレコードが届いたらTシャツ付きでセット販売する予定です。
ライブはいつか出来たらと思っています。

Q:最後に一言お願いします!

A (Shigenori):まだ2曲しか公開していない段階にも関わらず、インタビューしていただきありがとうございました!
バラエティに富んだアルバムになっていると思いますので、他の曲も是非聴いてみてください。


誠にありがとうございました。

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以上が、Frostvore のインタビューとなる。今は2曲のみ公開されている状態だが、海外からは早くも「Frostvore は本物のスウェディッシュ・デス」等の声が上がっている。そのスウェディッシュ・デスというジャンル自体は、もう30年以上続いており、相当な縛りゲ―・サウンドとなってきている。他方、このインタビューを通した彼らの音の印象としては、その型枠を尊重した上での様々な要素を感じさせてくれる。Asphyx のコピーをしていたKoki(Vo,Ba)、メタルコア世代ながらBlack Breath でHM-2に目覚め、Frostvore では刻みを意識したSatoshi(Gt)、moonrace というエレクトロ・ドゥームでも活動するTaro(Gt)、現行OSDM のデモ音源からチェックしているディガーのShigenori(Dr)等々……。様々なデスメタル観が絡み合って、Frostvore の音となっているに違いない。新作が非常に楽しみだ。

現在、base shop が開設されており、新作のCD、Colored vinyl 、Black vinyl。Tシャツ付きセット。ほかにも「溺れて死ぬTシャツ」「紫色ジャケTシャツ」「Drowned by いらすとやTシャツ」「アラビア語でデスメタルと書いてあるTシャツ」等のユニークなマーチャンを取り扱っているようだ。ちょっと見ただけで欲しくなったので、ヤバイ。



Frostvore 

base shop
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『Drowned by Blood / 溺れて死ぬ』
トラックリスト

1. Abandoned
2. Blackfield
3. Path to your Tomb
4. Extreme Cold Torture
5. Drowned by Blood
6. The Reaper
7. Eroded Mind
8. Lake of Vein
9. Unholy Mountain


……これは完全に余談だが、彼らはジャケット・コンセプトの【悪霊に取り憑かれた男が自我を失いながら殺戮を繰り返し死体の山を築く】の元ネタは、遊戯王のゴギガ・ガガギゴだと語った。ゴギガ・ガガギゴのテキストには「既に精神は崩壊し、肉体は更なるパワーを求めて暴走する。その姿にかつての面影はない…」とある。これは恐ろしい。たしかに通じるものがある。なお遊戯王は、マジック・ザ・ギャザリング(通称MTG)を元ネタとした、トレーディング・カード・ゲームとして知られている。DECIBEL 誌等で「デスメタルの美学を定義した」と評される画家のDan Seagrave は、MTG のイラストを多数手掛けていたことで有名だ。遊戯王にも、そのエッセンスが多少なり継承されているように思える。もしかすると、日本の若手デスメタル・フリークの多くは、少年期に遊戯王の禍々しいイラストに触れながら間接的に、OSDM を受け入れる感性の下地を形成していたのかもしれない。これについては、今後もリサーチしていきたい所存である。
Frostvore は、世界観は特に意識していないが、ネガティヴなものにしたと語る。その一方で、今回、様々な影響やコミカルさが見え隠れした。そこには、現行勢が強調する「哲学的な世界観」とは異なる、Bolt Thrower、Morbid Angel、Demilich 等といった、オリジネイターの根底にある遊びを瞥見させるものだ。