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偏愛音盤コレクション序説 从从从从
2020年の年間ベスト記事です。激音ジャンルから30枚を選出いたしました。

バンド名/アルバム名
(国名/レーベル/ジャンル)

ジャケットはbandcampにリンクしてあります。DIES IRAEさんのように。

それでは、あしからず。



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■ Worm / Gloomlord

(US / Iron Bonehead Productions / Funeral Doom, Doom Death )
Fantomslaughterによるソロ・プロジェクトだった初期のデモ2作では「LLN やダンジョンシンセから大いに影響を受けていた」と語り、Equimanthornが加入した前作『Evocation of the Black Marsh』は、割合Goatlord等に近いようなアンダーグラウンド極まりないスタイルとなっていました。この2ndフルは結果的に、フロリダン・フューネラル・ドゥームを称して、Spectral Voice~diSEMBOWELMENT再興の角度で評価され、その後バンドが20 Buck Spinと契約するような作品です。Yuri Kahanのアートワーク、D.L.(Cruciamentum)によるマスタリング。と、OSDMでも信頼度の強い部類の名手の手に掛りつつも、それ(OSDMのプレイパターン)に限定されない#3のGtソロや、作中の随所に挿入されるシンセなどに見られる、幽冥の道をいくメロディ/構成に驚嘆を禁じることができません。

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■ Void Paradigm / Ultime Pulsation | Demain Brûle

(France / Avantgarde Music / Black Metal )
フューネラル・ドゥームのAtaraxie等でのJonathan Théry(Vo)とJulien Payan(Gt,Ba)、Wormfood~Pin-Up Went Down等のアヴァンギャルドで活動するAlexis Damien(Dr)によるバンド。「Hypnotic Dodecatonic Black Metal」なる音楽性を標榜するVoid Paradigmの、「Ultime Pulsation」と「Demain Brûle」の20分近い2曲からなる3rdフル。音楽性を訳すと催眠十二音技法黒金属みたいな感じで、Ved Buens EndeやCarbonizedの2ndフル等に通じる人力の無機的なビートが特徴的な、無調のブラックメタルを演奏しています。オフィシャルによれば、崩れゆく世界をモチーフとした作曲のようで、ねじれたサウンドには対照的な構成の分かりやすさが魅力的。後半の混沌模様も期待を裏切らない好演振りで、おすすめです。

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■ Black Curse / Endless Wound

(US / Sepulchral Voice Records / Death, Black )
Sepulchral Voiceの発する強烈なオカルト愛好と、Blood Incantation周りの哲学偏向、エクスペリメンタル~ノイズの影響と、比類する音楽表現により類似する化身を召喚している話題作。コロラド州デンバーの猛者(Primitive Man, Blood Incantation, Spectral Voice, Khemmis)による。Arthur Rizkによるエンジニアリング。凄まじくブルータルです。

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■ KRUELTY / A Dying Truth

(Japan / Daymare Recordings / Death Metallic Hardcore )
関西ハードコアとOSDMのミックスといわれる町田のデスメタリック・ハードコア、KRUELTYの1stフル。エッジ的な良さのあったEPから発展して、秀逸なアルバム構成の作品を生み出しています。「Depressive Hardcore」を謡う通りの空模様が音に広がりますが、地獄みたいな現実と対峙する姿勢の、昨今のデスメタル作品としても見逃せません。国内シーンでの異様な存在感もさることながら、中心人物であるMCDが運営するDead Sky Recordingsの、Maggot StompやCaligari辺りと共振したリリースは先進的。Century MediaがFrozen Soulと、Nuclear BlastがFuming Mouthと契約する時流があり、それに先駆けてProfound Loreが当作を12"化しているのは見事としかいいようがないです。


15
■ Spirit Possession / Spirit Possession

(US / Profound Lore Records / Black Metal )
UltharやMastery(The Flenser所属の謎ブラック)等でのS.(Vo,Gt,Ba)と、Insect Ark ほかポストパンク~ドローン/サイケ界隈で活動してきたA.(Dr,Synth)によるデュオ。俗にいう1st Wave of Black Metalの確信犯的破滅のアンサンブルにサイケ/ポストパンク的浮遊感が内在したサウンドの1stフルです。Negative PlaneとAura Noirの中間のような響き(前衛、奇特さと獣性の反発)を伴いながら、悠久なる魔術の世界に誘ってくれます。Colin Marstonによるミキシングとマスタリング。ブラジル人アーティストのLuciana Lupe Vasconcelosによるアートワーク(Auroch等を手掛ける)。

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■ 〇 (NÚLL) / Entity

(Iceland / Ván Records / Doom, Depressive Black )
MisþyrmingやSkáphe等でのD.G.を中心としたバンドの、2017~2018年のレコーディング音源。今生を憂う様な表情を浮かべるクリーンでの斉唱パートやコーラスを多用した、重厚なドゥーム・ブラックメタルでこそ、眼裏に滲む不明瞭な輪郭に精神的価値を感じさせるもんです(芯の太さは同国のSolstafir等にも通じる)。現代でもかなり鋭い分野にあるサウンド表現として、PallbearerのエピックネスやPrimitive Manのネガティヴィティ、Thouの野蛮さ等のUSゾーンへ累を及ぼした作風にも思える力作でした。

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■ Mourning Beloveth : The Ruins of Beverast / Don't Walk on the Mass Graves [Split]

(Ireland : Germany / Ván Records / Death Doom : Atmospheric Black )
10分強の楽曲を2曲収録したSplit。Mourning Belovethは敬虔なクリーン・ヴォイスで人性への銷魂、苦悶を紡いだ静的な作風。The Ruins of Beverastは哀感に満ちたアルペジオを軸にソロウな陰影を浮かべていく、自然崇拝の作風。バンドの色は残しながら、お互いがお互いのフィールドを意識したようなSplitならではの情感とその音に、居心地の良さを感じていました。ジャンルレスに感情が通じ合うような感覚が、こうペシミスティックな場で発揮されるパターンは何度見ても印象深いです。Chapel of DiseaseのLaurent Teublによるマスタリング。SubRosa等を手掛けるGlyn Smythによるアートワーク。

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■ Thou / Emma Ruth Rundle / May Our Chambers Be Full

(US / Sacred Bones Records / Sludge, Doom )
現代スラッジの手法で、90's オルタナ、GOTHの文脈を引きだすThou(ザウ)と、Red SparowesやMarriagesのほか、近年はソロでも活躍するEmma Ruth Rundleのコラボレーション作。2021年にリリースを予定する次作のThe Cranberriesカヴァーに見られる通りの折衷模様に思いますが、ある種ポスト的なニュアンスでも楽しめる作品です。狂った福音のような理性で紡がれる歌唱と、泥濘とペーソスを超克した激切たるイメージが同居したかの音像は秀逸にも程があり。ジャンルを超えた交感、精神的な結びつきの強さが窺えるのはもちろん、vnを取り入れた終曲での繊細さに触れ、霜月の憂愁に在りし日の鬱屈を回視する思いです。

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■ Skáphe / Skáphe³

(US, Iceland / Mystískaos / Black Metal )
Chaos Moon等のJ.B.とA.P.、Misþyrming等でのD.G.による多国籍プロジェクト、Wormlustとのコラボレーションを経ての3rdフル。2017年『Untitled』EP収録の「VII」に続く、「VIII」~「XVII」が連なります。これまでの楽曲は「Kriegにも在籍するA.P.が」といった方が伝わりやすい種類のプリミティヴ的荒廃感がありましたが、今作はプロダクションが同国のSvartidauði等にも近いものに。氏が2018年に復活させたRingarëにある幻想への戯れなどとも別種の、静動の際立った劇的な展開ほか、どことなくポピュラリティの芽生え等が感じられます。D.G.の自国シーンを凝視したようなDsO以降の、関節が逆方向に折れるかの不協和音的調べが、やや明瞭な輪郭を帯びて、暴力的な音楽のまま叙情的深化を促しているよう。

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■ Faceless Burial / Speciation

(Australia / Dark Descent Records / Death Metal )
Internal RotのVoほか多数のプロジェクトを持つMax(Dr)、Tyrannamen やTwerps等のガレージ系のバンドで活動するAlex Macfarlane(Ba,Vo)、シューゲイズ・バンドWhite WallsのFuj(Gt)といった独特の3人組の、2ndフル。Blood Incantationの諸作品を手掛けたPete DeBoerによるミキシング、マスタリングで、Excruciating Terror等からの影響を公言するグラインディング・スタイルの前作から更なる技巧化を見せたような傑作です。OSDMを俯瞰した佇まいとプログレッシヴな暗黒的手法が煮詰まった結果、Mid 90's Sadistic IntentやLate 90's Metalcoreみたいに聴こえる(音響的に感じる)部分もあり愛聴しています。

29
■ Gulch / Impenetrable Cerebral Fortress

(US / Closed Casket Activities / Hardcore )
カリフォルニア州サンノゼのGulchによる、1stフル。デスメタリック・ハードコア・バンド、SpinebreakerのElliot Morrow(ここではVo)とCole Kakimoto(Gt)、クロスオーバー・バンド、DrainのTim Flegal(ここではBa)とSammy Ciaramitaro(ここではDr)という編成。ウィットに病んでるドカドカ気持ち良いハードコア・サウンド、頭カラッポにして聴けます。Deafheavenの諸作等をプロデュースするJack Shirleyのスタジオで制作。

31
■ Undeath / Lesions of a Different Kind

(US / Prosthetic Records / Death Metal )
Nile、Morbid Angel、Cannibal Corpseのマーチャンを装備したメンバー、Prostheticからのデビュー。1stデモ『Demo '19』を、SevaredからCD化した過去。SanguisugaboggのCody Davidson(Dr)が#1でGtソロを怪演、The Black Dahlia MurderのTrevor Strnad(Vo)が#3にゲスト参加。Bong Rips for Jesus(スラミング・ブルータル・デスメタル)のBen Cultrara(All instruments)によるマスタリング。こう情報を羅列しただけでも、シーンの中での異質さが際立つ、ニューヨーク州ロチェスターのOSDMの1stフル。これは素晴らしかった。Autopsyの影響を受けていた初期のCannibal Corpseみたいなサウンドを、Undergang以降の音作りで重厚化させつつ。Demilichの気配漂う病的なリフもシュールに散りばめているように聴こえます(#4~5辺りなど)。

20
■ JURASSIC JADE / id

(Japan / Bang The Head Records / Thrash Metal )
コ・プロデューサーにフジタ・タカシ(DOOM)を迎えた6年振りの作品。ライナーに色々な情報が載っており必見なのですが、ヒズミ(Vo)が挙げたインスパイア源の一つに某有名ボカロ曲がこれだけ曲名で妙に具体的にあって。でも所感としては、その周囲で聴けるいたずらに神様や死生観に手を伸ばして"みた"歌唱とは趣を異にして、人性の悩まし気な部分が絡んだまま剥き出しに"された"。ゆえに誰にも真似できず、強烈な個へと収斂していきます。机上や画面外、安全圏にはない熱を帯びた、ジャパニーズ・スラッシュ/ハードコアの現場感覚から、晦冥が広がるかの妖気漂うバッキングも、メタルのオドロオドロしい土壌から、ポストパンク/ハードコア的に凜乎として変質させているようで。異様なキレと緊張感を保った、独創の極致にある音ではないかと思えます。私TG.Atlas見て育ったので、King Crimsonの音を肯定的にみているハードコア・バンドが好きなんですけど、そういう部類の響きが刺さって、守備範囲外ながら上述した内容を包括的に見ての、とんでもない作品という揺らぎない確信を持たせてくれる。それがまた心を熱くさせてくれます。

23
■ Ulthar / Providence

(US / 20 Buck Spin / Black, Death )
カリフォルニア州オークランドのバンド。メンバーはVastumのShelby Lermo(Gt,Vo)、Spirit PossessionのEphemeral Domignostika(Ba,Vo)、ex-Mutilation RitesのJustin Ennis(Dr)の3人。前作は「オールドスクール・デスメタリック&ブラッケンドなクラスト不可視の領域から極彩色の暴力がやってきたってな感じ」だったのですが、今回はブラックメタル寄り。OSDMとの異質化を感じさせた2ndフルです。多彩なリフ・ワークとネクロな金切り声、諸々の音の抽象表現が、Voivod影響下のブラックメタルの尖兵みたいな、特異なサイキック・ヴァイオレンスを呼んでいます。

27
■ Wake / Devouring Ruin

(Canada / Translation Loss Records / Blackened Grind, Death, Post Sludge )
カナダ西部カルガリーという都市で2009年に結成。Infernal Coil、Vermin Womb、Knelt Rote等のブラッケンド・グラインドなる音楽スタイルをベースに、前作からポスト/スラッジ的側面を推し出してきているWakeの5thフル。レーベルメイトのTeethにも通じるGorguts~Ulcerate系の混沌とした音が、コールドな雰囲気で覆われた様相が異様で、Gridlink『Longhena』とInter Armaの混成を見せるようなテンション/リフ・ワークに聴き惚れました。コロラド州デンバーのFlatline Audio Studioにて制作。KhemmisのBen Hutcherson(Gt)が#5にゲスト参加。

28
■ Afterbirth / Four Dimensional Flesh

(US / Unique Leader Records / Progressive Brutal Death Metal )
90's NYDMのカルトによる、復活後2作目のフル・アルバム。Demilichの手法がAnataのものだった時代性を彷彿させる音を軸としたインストゥルメンタルを、情景喚起も豊かに切り替えながら、自己内的宇宙を構築していくような作風です。「もう少し見たいってところで終わるのが良いんだよねえ」タモリ@コージー冨田的な作りが個人的に好きです。ブルータル度は低めで、本筋の方には響いてない観があったけれど、もっと普遍的な、心の奥底にある風景に焦点が当たるような流れに感動していました。Colin Marstonによるエンジニアリング。

24
■ Bedsore / Hypnagogic Hallucinations

(Italy / 20 Buck Spin / Progressive Death)
SVNTHの新作は今年のポスト・ブラックメタルで最も上質な部類の作品だったところで、その中心メンバー2名が2018年に結成したこのプログレッシヴ・デスメタルのデビュー作も、実に素晴らしい仕上がりでした。ObliterationやMorbus Chron等に通じる作風の、夢幻を揺蕩い果てる様な感覚。技巧、展開、遍在的なあり様の、StargazerやBlood Incantation系の音との共鳴に、独創性ないし人脈の妙を感じさせ、#3で「Deathgazer」を題するセンス等にも特異さを窺わせる。昔のダッチ・デスメタルみたいな高音のキツさも感じさせつつ、各展開の豊かな煽情性により一気に聴かせます。アートワークは、Timo Ketola(R.I.P.)。

25
■ Necrobode / Sob o Feitiço do Necrobode

(Portugal / Iron Bonehead Productions / Bestial Black, Death )
レーベルから「ポルトガル出身の悪魔的なデュオ」と紹介されている、Necrobodeの1stフル 。べスチャル・ブラックはずっと細かな差異を楽しみに繋げるようなジャンルという認識になってしまってるんですけど、このバンドは結構デスメタル的な方向性でイカれてて好きです。90'sフィンランド的Goat崇拝の気配漂わせるというか、2018年の1stデモ時点で既にArchgoat等が引き合いに出されている音。で、アルバム中盤以降はRawでノレる展開が多く「Total Death」な怪しさを感じていました。南欧カルトめいた、終わりしなの密教的アプローチを経て作品を完成させるような作りも良いですね。

16
■ Witchbones / Goety

(US / Morbid Chapel Records, Blood Moon Productions, Iron Bonehead Productions / Black, Doom Death )
Vardlokkerというオレゴン州ポートランド周辺~Nihilistic Noise Propaganda界隈で活動するブラックメタル・アーティストが稼働した暗黒ドゥーム・デス。フルとしては3作目のラストアルバムです。音場は完全にSkáphe等の北欧&USの結託が生んだノイズ~プリミティヴ・ブラックの近似値で、(歪みきった認知の)美しいブラックメタルの追求においての妙妙たる閉塞感に憧れます。ラストはBurzumの「Erblicket Die Tochter Des Firmaments」カヴァー(他意は謎)。Miasma Vortexの言葉を借りますが、ドラムマシーンを用いた作風も、その冷徹さを助長する形で素晴らしいと思います。

35
■ ZOS / Here Death Lies Dead

(Poland / Self-released/ Drone, Doom )
KhemというJohn Cageのカヴァーをやったりする電子音楽に在籍するZos(Vo)のプロジェクト。2018年に行われたその最初の録音(儀式)のようです。Nibiruにも通じるリチュアルなドゥーム/スラッジの音楽性にはあり、bandcamp上の「Quiescent are my depths. Who could realize They contain such criminal abortions of the cosmos?」というコメントも重苦しい。内的宇宙の熱的死のような体験的進行が続き、作中終盤に差し掛かっての静けさ、沈黙の美しさには哀悼の念を抱くほど。

30
■ Nothing / The Great Dismal

(US / Relapse Records / Shoegaze )
SNS上でGorguts『Obscura』と並べられて話題を博していましたが、こちらの和尚ラジニーシは外に向けて発信される記号のようなものに見えます。DeftonesやThe Smashing Pumpkins等の先人や、その他多くのHCバンドによる現状を意識した様なリリースを回顧して、結果私個人が何かに導かれるということもなかったので何とも言えないのですが、多感な時期を孤独に過ごしつつ「人には誰にでも見えない翼がある 私がたったひとつこの世界に望む事があるとしたら 全ての人が自分の翼で飛ぶ事だ!」みたいな銃夢(漫画)のセリフに感動していた人間としては、やはり今作にあるような表現を好ましく思います。

32
■ Amnutseba / Emanatismst

(France / Iron Bonehead Productions / Black Metal )
国外のレビュワー界隈がややざわついたフランスの正体不明ブラック/デスメタルの1stフル。Deathspell Omega系とよくいわれる不協和音的なメロディをPortal系ともいえる(節足動物の猛進みたいな)音の密度でサイコに展開。#4でのインダストリアル/ダークウェーブ要素を挟みつつ作品を不穏にまとめていきます。bandcampのタグを見れば「death metal metal France」と、あえて「Black Metal」は外していそうです。が、流出説(Emanationism)との関連を窺わせるタイトルを始め、特定のブラックメタル・ルールに則った仕上がりに感じられます。

33
■ Cauldron Black Ram / Slaver

(Australia / 20 Buck Spin / Death, Black )
StarGazer等でのDenny Blake(ここではDr,Vo)、StarGazerやMournful Congregation等でのDamon Good(ここではGt,Vo)を中心に活動するバンド。2013年にMournful Congregation等でのBen Newsome(Ba,Vo)加入後2作目となる4thフルです。同界隈のプロジェクトとしては、正統派/エピック/ヴァイキング等の文脈を汲む、物語性に富んだスタイルで知られます(実際にパイレーツを題材とする文学から影響を受けていた時代もあり)。作中の勇壮さやエピシズムにおいての、野蛮なシーンとの適度な距離感や、亡者の群れが溢れ出るようなミッドテンポ・ベースの展開ほかヘヴィで良かったです。

14
■ Benediction / Scriptures

(UK / Nuclear Blast / Death Metal )
12年ぶりとなる8thフル。Dave Ingram(Vo)が復帰し、会心の出来栄えです。デスメタル・シーンが、Deathのアルバムといえば『Leprosy』っていう「わかりやすさ」が評価されがちなマイルに来た昨今に、UKのレジェンドによる今作は、最も求められる部類のサウンドになったと捉えることができます。その現代のOSDMニーズが、クラスト・ファンや、オールド・スラッシャーにも訴求した作品のようで、私的にも最高でした。#5にKam Leeがゲスト参加。
まさかの日本盤リリース。インタビューも必見です。
ダレン・ブルックス(ベネディクション)独占インタビュー (WARD LIVE MEDIA PORTAL)

39
■ Khthoniik Cerviiks / Æequiizoiikum

(Germany / Iron Bonehead Productions / Death, Black )
ZuulとIgnis Uraniumのメンバーにより結成されたバンドの2ndフル。Voivod、Sadistik Execution、Katharsis等と類型視される「Raw Punk Psychedelic!!」なブラック/デスメタル(実際はNeil Young等から影響を受けている)に、コタール症候群(歩く死体症候群)を題材とする病的な世界観。その譫妄的情景から時おり、自己に立ち返るサウンド上の内省感覚~エフェクトを巧みに切り替えるメロディ・ラインほか、Nachtmystium等にも通じるアトモスフィアが滲み、不思議な浮遊感と疾走感をベースとした幽玄たる進行を生んでいます。
34
■ Herxheim / Incised Arrival

(US / I, Voidhanger Records / Death, Black )
2017年に活動を終えたHowls of Ebbの、zELeVthaNDによるプロジェクトの1stフル。テキサスのべスチャル・ブラックとカルト・デスメタルのシーンを出自として、Howls of Ebbでは譫妄と幻視に耽ったようなデスメタルをかましていました。今作もほぼ同路線のサイケデリアが、スケールもRawに響いています。不可知不可侵を生々しくも不気味に演出せんとする佇まいが、氏のキャリアの総体を表しているようでも、単なる戯言のようにも聴こえて、捉えどころのない作品として印象深かったです。

36
■ Wyrmwoods / Gamma

(Finland / Inverse Records / Atmospheric, Avant-Garde Black )
3rdフル。メルヘンチックなのにここまで病的かと思って調べていたら、Thomas Ligottiの著作からも影響も影響を受けているような発言も過去あって、フィニッシュ・アンダーグラウンドの偏向とも合点がいきます。面白い展開&面白い(ソフト上の)楽器の組み合わせと、アトモスフェリック・ブラックのメロウな側面が、プリミティヴを理解した上での音作りと、滑らかなソング・ライティングにて織り成される様に感嘆しました。

37
■ Snorlax / II

(Australia / Brilliant Emperor Records, Mallevs Records / Blackened Death,OSDM )
クイーンズランド州ブリスベンを拠点に、Descentほかデス/グラインド系のバンドで活動するBrendan Auldのワンマン・プロジェクト。2018年の1stデモ『Splintering』、2019年のDrugoth(クラスト・ブラックメタル)とのSplitを経ての1stフル。カビゴン(ポケットモンスター)がバンド名で、これはデスメタル的に飽食や暴食とか立ち塞がりし者とかの意だと思いますが、音楽としては疾走感溢れるコールド・ブラックをデスメタル的倍音で増幅した様な仕上がり。Necro Frost(Carcinoidの1stフルを描いた人物)によるアートワークを含め、Raw&ネクロな世界観の構築に徹底し、終曲まで聴者にプレッシャーもとい強靭さと叙情の鮮やかなコントラストを投射し続けています。

38
■ Torture Tomb / Killing to See How It Feels

(US / Transylvanian Tapes / Blackened Death )
現在のテキサス州には、Power TripやMammoth Grinder等の先人に続く形で、HCからエクストリームなメタル界隈に参入する勢力があって、デスメタルも、いわゆるDevourment等が代表的なTXDMではないデスメタリック・ハードコアが興隆を見せています。このバンドは、そういったシーンで活動するKombatのA.J. Ross III(Gt,ここではVoも兼任)とTodd Thompson(Ba)とGrant Oehmler(Dr)の3名。そこにケンタッキー州のHCバンドKnocked LooseのGtであるCole Crutchfield(Vo)を加えた編成で活動しています(現在は一部脱退済み)。本作は1st EPで全3曲約10分を収録。Warhead Artによるアートワーク。Kombatはクロスオーバー要素が強くそれも魅力的なのですが、こちらはKnocked Loose仕込みといったVoの掛け合い方やグルーヴによるメリハリが効いており。Jesus PieceやVein等にも通じる界隈のバンドがデスメタル化した様な凶悪な音が衝撃的です。

26
■ Question / Reflections of the Void

(Mexico / Chaos Records / Death Metal )
2010年代中期以降に、Blood Incantation、Tomb Mold等といったOSDMバンドがトレンド化する中で、No Clean Singing辺りからは完全ダークホース扱いだった彼ら。メキシカン・デスメタルの歴史で切り取っても、Chenotaph~The Chasmを継承したストレンジな音楽性で、今後も注目したい存在です。#3~4のエピカルな流れはプログレッシャーにも受けそうで、続く#5にてフルブラストでの幕開けを見せるなど。アルバム全体での音として調和がとれた仕上がりと言いたく、10割オールドスクールな質感ながらにDeathでいうところの『Symbolic』的な、ドラマ性のある推移を導いています。


※敬称略

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以上となります。

前年よりさらに10作少なくなってしまいましたが、これはリリースが少なかったこととは関係なく、ちょっと半年ぐらいメタルを聴いても何も味がしない期間があったためで、またシーン内の状況に接して「今年は豊作でしたね~」と思えるメンタルを持ち合わせていないのもあります。年間ベストも、なんかもう無価値な気はしますが、2024年までは続けると決めたので普通に更新していきます。

今年は自己内省の時間が増えて、ラインナップ的にも個を感じさせるものが多くなりました。単純にライヴベースで活動するバンドが停滞し、個人プロジェクトのリリースが多くなったのも関連しますが、これは「ジャンルの垣根を超えた」みたいなリリースが増加した昨今の情勢に起因することだろうと思います。界隈の融和が進んでいくことによって、これまであった文化思想、コンテクストが破壊されて、強烈な個のみが残っていく段階に来ており、そして私が今に立ち返った時に、そういう作品が目に留まるようになっているだろうと。Oranssi Pazuzuの新譜などは特にそうで、Andy Stottのような方のアプローチとその伝播具合に見えました。文章としても個人的な内容を多く含み、恥ずかしい限りですが、今年の記事は特に気を遣っていないということで理解してもらえると幸いです。

また、オールドスクール・デスメタル・ガイドブック下巻についても、停滞気味です。もし今年出せていたとしても、直ぐに古い内容になるのではないかと危惧しており、ちょっと来年以降のOSDMの動向が気になっている次第ですね。それも更にずれ込むかも知れませんが、その時はその時でうまいことやるしかないです。


ご閲覧頂きありがとうございました。

それではまた。